経理業務マニュアルの作り方
完璧を目指すと終わりません。役に立つのは年間カレンダーとアクセス権の一覧の2つだけ。作り方は「今月やったことを1行メモする」を12か月続けるだけです。網羅的な操作手順は後回しで構いません。
完璧なマニュアルより、「今月やったこと」の記録から始めます
経理マニュアルが作られない理由は、網羅的に書こうとして終わらないからです。実務で役に立つのは「毎月・毎年、いつ何をするか」のカレンダーと「その作業の手順」の2つだけ。作り方は簡単で、今月やった作業を、やりながらメモしていく——12か月続ければ完成します。
最低限あればいいもの
| 資料 | 内容 | 優先度 |
|---|---|---|
| 年間カレンダー | 毎月・毎年の期限と作業(下記) | 最優先 |
| アクセス権の一覧 | どのシステムに誰が入れるか、窓口はどこか | 最優先 |
| 定期支払の一覧 | 毎月・毎年の引き落とし | 高 |
| 取引先の一覧 | 締日・支払日・振込名義 | 高 |
| 月次の作業手順 | 締めの流れ | 中 |
| 科目の使い方 | 迷いやすい支出の処理ルール | 中 |
| 各作業の操作手順 | 会計ソフトの画面操作など | 低(後回しでよい) |
年間カレンダーの中身
| 頻度 | 項目 |
|---|---|
| 毎月10日 | 源泉所得税の納付(納期の特例なら7/10・1/20) |
| 毎月末 | 社会保険料の納付、請求書の発行、支払 |
| 毎月(締め後) | 月次決算(月次決算を5営業日で締める手順) |
| 3月 | 健康保険料率の改定 |
| 6〜7月 | 算定基礎届、労働保険の年度更新(算定基礎届の時期にやること) |
| 決算3か月前 | 着地見込みと打ち手の決定(決算3か月前にやること) |
| 決算日 | 棚卸、現金実査(期末の棚卸の進め方) |
| 決算日+2か月 | 申告・納付 |
| 期首+3か月以内 | 役員報酬の決定(新年度に切り替わるときの経理の準備) |
| 該当月 | 中間申告(中間申告・予定納税の時期と金額) |
| 10〜12月 | 年末調整(年末調整を終わらせる手順) |
| 翌1月31日 | 法定調書、給与支払報告書、償却資産申告 |
これを1枚の紙にすれば、それだけで引き継ぎ資料になります。
アクセス権の一覧に書くこと
- システム名(会計ソフト、ネットバンキング、e-Tax、カード会社、給与ソフト)
- 契約者名義(法人か個人か)
- 登録メールアドレス
- 管理者は誰か
- 問い合わせ窓口(電話番号・URL)
パスワードは書きません。「どこに連絡すれば再発行できるか」が分かれば十分です。パスワード管理は別の仕組み(パスワード管理ツールなど)で行ってください。
作り方:やりながら書く
- 今月やった作業を、終わるたびに1行メモする — 「5日:源泉所得税を納付(e-Taxから)」
- 迷ったことも書く — 「◯◯社の請求は税抜表示なので注意」
- 調べたことを書く — 二度目に調べなくて済みます
- 12か月続ける — 年に1回の作業も1周すれば全部出ます
- 翌年、そのメモを見ながら作業して修正する — これで実用的なマニュアルになります
最初から完璧に書こうとすると、絶対に終わりません。「来月の自分への申し送り」くらいの気持ちで書くのがコツです。
書式は問いません
- Excelでも、テキストファイルでも、共有ドキュメントでも構いません
- 1か所にまとまっていることが重要
- 個人のPCではなく、共有の場所に置く
- 画面のスクリーンショットを貼ると、操作手順は一気に分かりやすくなります
外注していても必要です
記帳を外に出していても、社内に残る業務(請求、入金確認、支払、資料の送付)があります。この部分の手順は社内で残す必要があります。
ただし、外注すると「処理の型」が社外にも残るという利点があります。科目の使い方、月次の締め方は外注先が保持しているため、社内のマニュアルは薄くて済みます。これも属人化を避ける方法の一つです(経理が1人しかいない会社が休職・退職に備える方法)。
無料の経理引き継ぎチェックリストは、優先度A・B・Cで並べてあります。Aの8項目を埋めるだけでも、最低限の引き継ぎ資料になります。
この記事に関するよくある質問
経理マニュアルには何を書けばいいですか?
優先順位があります。最優先は年間カレンダー(毎月・毎年の期限と作業)とアクセス権の一覧(どのシステムに誰が入れるか、窓口はどこか)。次に定期支払の一覧と取引先の締日・支払日。会計ソフトの操作手順は後回しで構いません。
マニュアルを作る時間がありません。
今月やった作業を、終わるたびに1行メモしてください。「5日:源泉所得税を納付(e-Taxから)」程度で十分です。迷ったことや調べたことも書いておき、12か月続ければ年1回の作業も全部出ます。最初から完璧に書こうとすると絶対に終わりません。
アクセス権の一覧にパスワードも書きますか?
書きません。システム名、契約者名義(法人か個人か)、登録メールアドレス、管理者、問い合わせ窓口があれば十分です。「どこに連絡すれば再発行できるか」が分かれば復旧できます。パスワードは別の仕組みで管理してください。