業種別 ・ 約8分

建設業の記帳で難しい3つのこと

工事ごとの原価管理、期をまたぐ工事(未成工事支出金)、収益の計上基準。一人親方への支払が給与と認定されると金額が最も大きくなります。経営事項審査を受ける場合の決算書様式にも触れました。

まず結論

難所は「工事ごとの原価」と「期をまたぐ工事」です

建設業の記帳が他業種と違うのは、売上と原価を工事ごとに紐づける必要がある点です。期末に完成していない工事の原価は未成工事支出金として資産に計上し、費用にしません。さらに経営事項審査(経審)を受けるなら、決算書の様式そのものが建設業法のものになります。この3つを押さえれば大枠は掴めます。

1. 工事ごとの原価管理

すべての費用を「どの工事のものか」で分けます。会計ソフトの工事コード(部門・プロジェクト機能)を使うのが一般的です。

原価の区分内容
材料費その工事に使った資材
労務費直接工事に従事した人の人件費
外注費下請けへの支払
経費重機のリース、現場の水道光熱費、運搬費、労災保険料

この4区分は経審や建設業許可の決算変更届で必要になります。日々の記帳の段階で分けておかないと、決算時に振り分け直す作業が発生します。

共通費の配賦をどうするかを最初に決めてください。 現場管理者の人件費、事務所の家賃、車両費など、複数の工事にまたがるものです。工事ごとの売上高比率や作業時間比率で按分するのが一般的ですが、基準を決めて継続することが重要です。

2. 期をまたぐ工事(未成工事支出金)

期末時点で完成していない工事にかかった原価は、費用ではなく資産として計上します。

科目意味対応
未成工事支出金完成していない工事に使った原価資産(棚卸資産)
未成工事受入金完成前に受け取った前受金負債
完成工事高完成した工事の売上収益
完成工事原価完成した工事の原価費用

これを処理しないと、利益が実態と大きくずれます。原価だけ先に費用計上され、売上が翌期になるためです。期末の未成工事を一覧にして、金額を確定させてください。

3. 収益の計上基準

工事の売上をいつ計上するかは、原則として工事の進捗度に応じて計上する方法と、完成・引渡しの時点で計上する方法があります。工事の期間や金額によって適用が分かれ、会計基準の改正の影響も受けます。

どちらを採用しているかを明確にし、継続して適用してください。年度によって変えると、税務調査で必ず指摘されます(税務調査で指摘されやすい10の論点)。

4. 外注費か給与かの判定

建設業で最も金額が大きくなる論点です。一人親方への支払を外注費として処理していたところ、実態は雇用だと認定されると、次が同時に発生します。

  • 過去分の源泉所得税(会社が納付)
  • 不納付加算税・延滞税
  • 消費税の仕入税額控除の否認
  • 社会保険の遡及適用を求められることも

判定は契約書の名称ではなく、指揮命令の有無、代替性、時間的拘束、材料や用具の負担などの実態で行われます(業務委託への支払)。

5. 経営事項審査を受ける場合

公共工事を受注するには経審が必要で、建設業法に定める様式の決算書を作成します。一般的な決算書とは科目の並びが異なります。

  • 完成工事高・完成工事原価・完成工事総利益という区分
  • 兼業事業がある場合の区分表示
  • 労務費・外注費の内訳
  • 決算変更届(事業年度終了後4か月以内)の提出

経審の点数は工事の受注に直結するため、建設業の実務を知っている事務所に依頼したほうが確実です。

その他の建設業特有の処理

項目処理
重機の購入固定資産。中古なら耐用年数の見積り(中古車の耐用年数と同じ考え方)
足場・仮設材金額と使用期間による。リースなら賃借料
建設業の許可更新料支払手数料または租税公課
現場の弁当代福利厚生費または現場経費。接待なら交際費
下請けへの前払前渡金。工事完成時に原価へ振替
契約書の印紙工事請負契約書は印紙が必要。貼り忘れは過怠税3倍収入印紙

外注する場合に確認すること

  • 建設業の対応経験があるか(経審・決算変更届まで対応できるか)
  • 工事別の原価管理をどう運用するか
  • 共通費の配賦基準をどう決めるか
  • 未成工事支出金の集計を誰が行うか
  • 一人親方への支払の扱いをどう整理するか

これらを理解していない事務所だと、決算時に大量の振り分け作業が発生します。選び方は記帳代行業者の選び方、費用の目安は仕訳件数から試算できます。業種別の一覧は建設業の記帳・経理にもまとめています。


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よくある質問

この記事に関するよくある質問

建設業の記帳で最も難しいのはどこですか?

工事ごとに売上と原価を紐づけることです。材料費・労務費・外注費・経費の4区分で管理する必要があり、これは経営事項審査や決算変更届でも求められます。日々の記帳で分けておかないと、決算時に振り分け直す作業が発生します。

未成工事支出金とは何ですか?

期末時点で完成していない工事にかかった原価です。費用ではなく資産(棚卸資産)として計上します。これを処理しないと原価だけ先に費用計上され、売上が翌期になるため、利益が実態と大きくずれます。

一人親方への支払は外注費でいいですか?

実態によります。指揮命令の有無、代替性、時間的拘束、材料や用具の負担などで判定され、実質的に雇用と認定されると過去分の源泉所得税、不納付加算税・延滞税、消費税の仕入税額控除の否認が同時に発生します。建設業で最も金額が大きくなる論点です。

経理を採用する前に、いくらで回るか確かめてください。

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