実務の手順 ・ 約7分

期末の棚卸の進め方

棚卸表が無い在庫は金額を証明できません。必要なのは日付・品名・数量・単価・金額の5項目。他社に預けている在庫や外注先にある材料など「見えない在庫」が最も漏れます。評価損の要件と差異の見方も整理しました。

まず結論

棚卸表が無い在庫は、金額を証明できません

期末在庫は売上原価を通じて利益に直結します(在庫が1円増えれば利益も1円増える)。だから税務調査では棚卸表の提示を求められます。必要な項目は日付・品名・数量・単価・金額の5つ。「だいたいこのくらい」で計上している状態は、金額そのものを否認され得ます

なぜ在庫で利益が動くのか

売上原価は次の式で計算されます。

売上原価 = 期首在庫 + 当期仕入 − 期末在庫

期末在庫が大きいほど売上原価は小さくなり、利益が増えます。逆に在庫の計上を省くと、仕入がすべて費用になり利益が過少になります。

棚卸表に必要な項目

項目内容
日付実施日。決算日時点の在庫であること
品名・規格何がいくつあるか特定できる粒度で
数量実際に数えた数
単価評価方法にもとづく単価
金額数量×単価
担当者誰が数えたか(あれば望ましい)

数える対象を漏らさない

場所・状態扱い
自社倉庫・店舗の在庫対象
他社に預けている在庫対象(自社の資産
委託販売で先方にあるもの対象(売れるまで自社の在庫)
ECモールのフルフィルメント倉庫対象
未着品(仕入れたが未到着)所有権の移転時期による
外注先にある材料対象(製造業)
仕掛品対象(製造業・建設業)
預かり品(他社の資産)対象外
販売済みで未出荷対象外(売上に計上済みなら)
「見えないところにある在庫」が最も漏れます。 他社の倉庫、委託販売先、外注先。物理的に目の前に無いため意識から外れますが、いずれも自社の資産です。管理画面や先方への確認で数量を把握してください。

評価方法

単価をどう決めるかです。届出をしていなければ最終仕入原価法になります。

方法単価
最終仕入原価法期末に最も近い時期の仕入単価。届出なしの場合はこれ
総平均法期首在庫+当期仕入の合計÷総数量
移動平均法仕入のたびに平均単価を計算
先入先出法先に仕入れたものから払い出したとみなす
個別法個々の取得価額。宝飾品・不動産など

方法を変えるには事前の届出が必要で、変更は原則3年間できません。継続適用が原則です。

評価損を計上できる場合

売れ残り・型落ち・破損した在庫の評価を下げたい場合、要件があります。

  • 災害により著しく損傷した
  • 著しく陳腐化した(型式が変わって通常の方法では販売できない等)
  • 破損・型崩れ・品質変化で通常の方法で販売できない

「売れそうにないから」という理由だけでは評価損は計上できません。単なる価格の下落も対象外です。廃棄するなら、廃棄の事実を証明する記録(廃棄業者の伝票、写真、廃棄リスト)を残してください(商品を廃棄した・棚卸資産の評価損)。

実施の段取り

  1. 実施日を決める — 決算日当日が原則。難しければ前後で日付を決め、その日から決算日までの出入りを調整します
  2. 棚卸表の様式を用意する — 毎年同じ形式にすると比較できます
  3. 担当と範囲を割り振る — 数え漏れ・二重カウントを防ぐため、エリアを明確に
  4. 数える — できれば2人1組(1人が数え、1人が記録)
  5. 帳簿在庫と比較する — 差異が大きい品目は原因を確認
  6. 単価を入れて金額を確定
  7. 会計ソフトに計上 — 期首在庫の振戻しと期末在庫の計上

差異が出たときの見方

  • 帳簿より実在庫が少ない — 破損、紛失、記録漏れ、盗難の可能性。棚卸減耗損として処理します
  • 帳簿より実在庫が多い — 仕入の計上漏れ、返品の未処理
  • 毎年同じ方向にずれる — 記録の運用に問題があります

差異そのものより、原因を確認して記録に残すことが重要です。

省略しないための工夫

品目が多い業種では、棚卸が大きな負担になります。次の工夫で軽くできます。

  • 金額の大きい品目から数える — 上位2割で金額の8割を占めることが多い
  • 少額・多品種は概算で — ただし方法を決めて毎年同じやり方で
  • 在庫管理システムを使う — 会計ソフトで1品ずつ管理しようとすると破綻します
  • 期中も定期的に数える — 期末に一度きりだと差異の原因が追えません

業種別の注意点は卸売・小売の記帳で難しい3つのこと製造業の記帳で難しい3つのことEC・ネットショップの記帳で難しい3つのことにまとめています。決算全体の段取りは決算3か月前にやることに。


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よくある質問

この記事に関するよくある質問

棚卸表には何を書けばいいですか?

日付・品名・数量・単価・金額の5項目です。日付は決算日時点であること、品名は何がいくつあるか特定できる粒度が必要です。税務調査ではこの提示を求められ、出せなければ在庫の金額そのものが否認され得ます。

他社の倉庫にある在庫も数えますか?

数えます。委託販売で先方にあるもの、ECモールのフルフィルメント倉庫、外注先にある材料——いずれも自社の資産です。物理的に目の前に無いため意識から外れやすく、最も漏れやすい部分です。管理画面や先方への確認で数量を把握してください。

売れ残った在庫の評価を下げられますか?

要件があります。災害による著しい損傷、著しい陳腐化、破損や品質変化で通常の方法で販売できない場合に限られ、「売れそうにないから」という理由だけでは計上できません。廃棄する場合は、廃棄業者の伝票や写真など事実を証明する記録を残してください。

経理を採用する前に、いくらで回るか確かめてください。

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