業種別 ・ 約7分

卸売・小売の記帳で難しい3つのこと

決定的なのは棚卸です。在庫を1円動かせば利益も1円動くため、棚卸表の裏付けが無い決算書は税務調査で崩されます。仕入値引・リベート・返品の処理、軽減税率の混在も実務の負担です。

まず結論

難所は「棚卸」です。ここで利益がいくらでも動きます

卸売・小売の記帳で決定的なのは期末在庫の金額です。仕入をすべて費用にすると利益が過少になり、在庫を1円動かせば利益も1円動く——つまり棚卸表の裏付けが無い決算書は、税務調査で真っ先に崩されます。加えて仕入値引・リベート・返品の処理と、軽減税率の混在が実務の負担になります。

1. 棚卸が全てを決める

売上原価は「期首在庫 + 当期仕入 − 期末在庫」で計算します。期末在庫が大きければ原価が小さくなり、利益が増えます。

必要なもの内容
棚卸表日付・品名・数量・単価・金額。これが無いと在庫の金額を証明できません
実地棚卸実際に数える。帳簿在庫との差異を確認する
評価方法最終仕入原価法、総平均法など。届出がなければ最終仕入原価法
未着品仕入れたが到着していないもの。所有権の移転時期による
預け在庫他社の倉庫・委託販売先にあるものも自社資産
不良品・滞留品評価損には要件がある。廃棄なら証拠を残す
「だいたいこのくらい」で在庫を計上している会社が実際にあります。 税務調査で棚卸表の提示を求められたときに出せなければ、在庫の金額そのものが否認され得ます。1日で終わる作業ではないので、期末の実施計画を立ててください。

2. 仕入まわりの処理

事象処理
仕入値引・返品仕入のマイナス
仕入割戻し(リベート)仕入のマイナスまたは雑収入。契約内容による
販売奨励金売上のマイナスまたは雑収入
引取運賃仕入に含める(取得価額)(商品の仕入と引取運賃
仕入割引(早期支払)営業外収益(金利の性質)
サンプル品・見本品販売促進費。在庫から振り替える
自家消費売上として計上(商品を自分や家族で使った

リベートは契約の内容で処理が変わります。仕入数量に応じた割戻しなら仕入のマイナス、販売促進の性質なら収益。判断が必要なので、契約書を保存しておいてください。

3. 軽減税率の混在

食品を扱う小売では、8%と10%が売上でも仕入でも混在します。

  • 飲食料品(酒類・外食を除く)は8%
  • 日用品・雑貨は10%
  • 一体資産(食品と非食品のセット)は要件により判定
  • レジのデータが税率別に分かれているかが最重要

4. 売上の計上時期

卸売では出荷基準・引渡基準・検収基準のいずれかを選び、継続して適用します。期末近くの出荷が翌期の売上になっていないかは、税務調査で必ず見られる論点です(税務調査で指摘されやすい10の論点)。

その他の処理

項目処理
倉庫の賃料地代家賃。事業用なので課税
棚・什器金額により消耗品費または固定資産
包装材・レジ袋消耗品費または荷造運賃
ポイント制度付与時に引当が必要になる場合がある
売掛金の貸倒れ要件を満たせば損金(売掛金が回収できない
店舗の内装建物附属設備(店舗・事務所の内装工事費

効率化の順番

  1. 在庫管理システムと会計を分ける — 在庫は専用システムで管理し、会計には月末残高だけ渡します。会計ソフトで在庫を1品ずつ管理しようとすると破綻します。
  2. 仕入先の請求書をデータで受け取る
  3. POSまたは販売管理システムから売上を日次で取り込む
  4. 期末の棚卸を仕組みにする — 実施日、担当、集計方法を毎年同じ手順で

外注する場合は、在庫の集計を誰が行うかを必ず決めてください。ここが曖昧だと決算前に慌てます。選び方は記帳代行業者の選び方、費用は仕訳件数から試算できます。


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よくある質問

この記事に関するよくある質問

棚卸表は必ず作らないといけませんか?

作ってください。売上原価は期首在庫+当期仕入−期末在庫で計算するため、期末在庫の金額がそのまま利益を動かします。税務調査で棚卸表(日付・品名・数量・単価・金額)の提示を求められて出せなければ、在庫の金額そのものが否認され得ます。

仕入リベートはどう処理しますか?

契約の内容によります。仕入数量に応じた割戻しなら仕入のマイナス、販売促進の性質が強ければ雑収入や売上のマイナスになります。判断が必要なため、契約書を保存しておいてください。

在庫を会計ソフトで管理すべきですか?

在庫は専用の在庫管理システムで管理し、会計には月末残高だけを渡すのが現実的です。会計ソフトで1品ずつ管理しようとすると破綻します。他社の倉庫や委託販売先にある預け在庫も自社資産として計上が必要です。

経理を採用する前に、いくらで回るか確かめてください。

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