飲食店の記帳で難しい3つのこと
日次売上の入金経路別管理、店内10%とテイクアウト8%の軽減税率、まかないの給与課税。デリバリー手数料を相殺したまま処理するのが最も多い誤りです。効率化の順番も示しました。
難所は「日次の売上」と「軽減税率」です
飲食店の記帳が重いのは、売上が毎日発生し、現金・カード・電子マネー・デリバリーの各社で入金経路が分かれるためです。さらに店内飲食は10%、テイクアウトは8%と税率が分かれ、まかないは条件を満たさないと給与課税になります。この3つの運用を決めれば、あとは件数の問題です。
1. 日次売上の管理
売上は毎日発生しますが、入金は経路ごとにタイミングが違います。
| 経路 | 入金 | 処理 |
|---|---|---|
| 現金 | 即時 | 売上/現金。レジ締めの記録が根拠 |
| クレジットカード | 数日〜1か月後 | 売上/売掛金。入金時に手数料を差し引いて消込 |
| 電子マネー・QR決済 | 各社の締めによる | 同上。決済会社ごとに売掛金の補助科目を分ける |
| デリバリー(出前館・Uber等) | 週次・月次 | 売上総額で計上し、手数料は費用に。相殺後の入金額だけを売上にしない |
| 予約金・前受 | 提供前 | 前受金。提供時に売上へ振替 |
2. 軽減税率(8%と10%)
| 提供形態 | 税率 |
|---|---|
| 店内飲食(イートイン) | 10% |
| テイクアウト・宅配 | 8% |
| ケータリング(相手方の指定場所で給仕) | 10% |
| 酒類 | 10%(テイクアウトでも) |
| 食材の仕入 | 8% |
| 店内の備品・消耗品の仕入 | 10% |
売上も仕入も税率が混在します。レジのデータが税率ごとに分かれているかを確認してください。分かれていないと、記帳の段階で分けられません。
3. まかないの扱い
従業員に提供する食事は、条件を満たさないと給与として課税されます。
- 従業員が食事代の半分以上を負担していること
- 会社の負担額が月額一定額以下であること
両方を満たせば給与課税されません。満たさない場合は、その分が現物給与として源泉徴収の対象になります。無料で提供している店は要注意です(飲食店のまかない)。
その他の飲食店特有の処理
| 項目 | 処理 |
|---|---|
| 食材の期末在庫 | 棚卸資産。金額が大きい業態では必須 |
| おしぼり・割り箸・容器 | 消耗品費。期末に大量に残るなら貯蔵品 |
| 厨房機器 | 固定資産。10万円未満なら消耗品費 |
| 内装工事 | 建物附属設備。賃借物件でも資産計上(店舗・事務所の内装工事費) |
| 敷金・保証金 | 資産。償却される部分は費用(事務所の敷金・礼金・保証金) |
| アルバイトの給与 | 扶養控除等申告書の有無で税額が変わる(アルバイト・パートの給与) |
| 廃棄した食材 | 原価に含まれる。大量廃棄は記録を残す |
| レジの現金過不足 | 現金過不足で処理(現金が合わないとき) |
仕訳件数が多くなる業種です
日次の売上、多数の仕入先、アルバイトの給与——飲食店は仕訳件数が膨らみやすい業種です。1店舗でも月300〜500件、複数店舗なら1,000件を超えることも珍しくありません。
件数が多いほど、入力を社内で抱える負担が大きくなります。一方で、POSレジと会計ソフトの連携、決済データの自動取り込みを使えば、件数の割に手間を抑えられます。
効率化の順番
- POSレジのデータを日次で会計ソフトに取り込む — 手入力を無くします。税率別に分かれていることを確認。
- 決済会社ごとに売掛金の補助を分ける — 入金の消込が自動化できます。
- 仕入先の請求書をデータで受け取る — 読み取りの精度が上がります(証憑をAIに読み取らせるときの精度と限界)。
- 残る判断の部分を税理士に — まかない、廃棄、按分の判断。
外注する場合は、飲食店の対応経験と、POSデータの取り込みに対応できるかを確認してください。選び方は記帳代行業者の選び方、費用は仕訳件数から試算できます。飲食店の記帳・経理もあわせてご覧ください。
この記事に関するよくある質問
デリバリーの売上はどう記帳しますか?
総額で計上します。売上1,000円・手数料350円で入金650円の場合、売上650円と記帳すると売上高が過少になり消費税の申告にも影響します。売上1,000円と支払手数料350円に分けて計上してください。
店内飲食とテイクアウトの税率はどう管理しますか?
店内飲食は10%、テイクアウトと宅配は8%です(酒類はテイクアウトでも10%)。レジのデータが税率ごとに分かれているかを確認してください。分かれていないと記帳の段階で分けられません。仕入も食材8%・備品10%で混在します。
まかないは経費にできますか?
従業員が食事代の半分以上を負担し、会社の負担額が月額一定額以下であれば給与課税されません。無料で提供している場合は現物給与として源泉徴収の対象になります。