仕組みの解説 ・ 約7分

インボイス制度で記帳がどう変わったか

仕訳の本数は変わっていません。増えたのは1件ごとに登録番号を確認し、無ければ経過措置の割合で処理を分ける「判断と確認」の手間です。発行側で増えた作業、登録番号の確認方法、外注が増えた実質的な理由まで。

まず結論

仕訳の本数は変わりません。増えたのは「1件ごとの確認作業」です

インボイス制度で記帳が重くなった理由は、取引の件数が増えたからではありません。1件ごとに「相手が適格請求書発行事業者かどうか」を確認し、そうでなければ経過措置の割合で処理を分ける必要が生じたためです。つまり入力の手間ではなく、判断と確認の手間が増えた——ここが外注を検討する会社が増えた実質的な理由です。

何が変わったのか

項目制度前制度後
仕入税額控除の要件帳簿と請求書等の保存適格請求書(インボイス)の保存が必要
相手の確認不要登録事業者かどうかの確認が必要
免税事業者からの仕入全額控除できた経過措置の割合でのみ控除
会計ソフトの入力税区分のみ税区分+インボイスの有無
請求書の記載事項比較的簡易登録番号・適用税率・税率ごとの消費税額が必須

記帳の現場で起きていること

1. 領収書ごとに登録番号を見る作業が増えた

これまでは金額と日付と内容を見れば入力できました。いまは登録番号(T+13桁)が書かれているかを1枚ずつ確認します。書かれていなければ、免税事業者か、記載漏れかを判断する必要があります。

2. 同じ取引先でも扱いが分かれる

登録番号を持つ取引先と、持たない取引先が混在します。取引先マスタに登録番号を持たせて管理するのが実務上の対応です。会計ソフトの多くは、取引先ごとに登録番号を登録できます。

3. 少額の特例を使うかどうかの判断

一定規模以下の事業者には、少額(税込1万円未満)の取引についてインボイスの保存を不要とする特例があります。使えるかどうかで実務の重さが大きく変わるため、自社が対象かを最初に確認してください。

4. 経過措置の割合を追う

免税事業者からの仕入について、段階的に控除できる割合が下がっていく経過措置があります。期間によって割合が変わるため、会計ソフトの税区分を正しく選ぶ必要があります。

会計ソフトの税区分が増えました。 「課税仕入10%」だけでなく「課税仕入10%(インボイスなし・経過措置◯%)」といった区分が加わっています。ここを取り違えると、消費税の納付額が直接変わります。

自社が登録事業者の場合、発行側でも作業が増えます

  • 請求書の様式変更 — 登録番号、適用税率、税率ごとに区分した消費税額の記載が必要です。
  • 写しの保存 — 発行したインボイスの写しを保存する義務があります。
  • 返品・値引きの処理 — 一定の場合に返還インボイスが必要です(少額のものは免除される取扱いがあります)。
  • 端数処理 — 税率ごとに1回だけ。明細ごとに端数処理する運用は認められません。

登録番号の確認方法

国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で、登録番号から事業者名を確認できます。取引開始時に一度確認して、マスタに登録しておくのが効率的です。

ただし登録は取り消されることがあります。継続的な取引先については、定期的に確認する運用を決めておくと安全です。

なぜ外注が増えたのか

制度前は「入力するだけ」だった作業に、判断が挟まるようになったためです。

  • 登録番号があるか無いか
  • 無い場合、免税事業者なのか記載漏れなのか
  • 経過措置の割合はどれか
  • 少額特例を使えるか

この判断を社内の担当者1人が抱えると、迷った時点で作業が止まります。しかも判断を誤ると消費税の納付額が変わるため、間違いのコストが記帳ミスより大きくなりました。

ここが、記帳を税理士が関与する形で外に出す会社が増えた実質的な理由です。判断が必要な取引だけ税理士に上げる運用にすれば、止まりません。仕訳件数から費用を試算できます。

制度の詳細

要件や経過措置の割合は改正されることがあります。具体的な適用の判断は、必ず最新の情報と個別の事情にもとづいて行ってください。当サイトではインボイス制度に基本を、電子帳簿保存法に保存要件をまとめています。両制度は連動する場面が多く、電子で受け取ったインボイスは電子のまま保存する必要があります。


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よくある質問

この記事に関するよくある質問

インボイス制度で記帳の何が変わりましたか?

取引の件数ではなく、1件ごとの確認作業が増えました。相手が適格請求書発行事業者かを確認し、登録番号が無ければ免税事業者か記載漏れかを判断し、経過措置の割合を選ぶ必要があります。入力の手間ではなく判断の手間が増えました。

取引先が登録事業者かどうかはどう確認しますか?

国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで、登録番号から事業者名を確認できます。取引開始時に一度確認して会計ソフトの取引先マスタに登録しておくのが効率的です。ただし登録は取り消されることがあるため、継続的な取引先は定期的に確認してください。

インボイス制度で外注を検討する会社が増えたのはなぜですか?

判断を誤ると消費税の納付額が直接変わるためです。登録番号の有無、経過措置の割合、少額特例の適用可否——これらの判断を社内の担当者1人が抱えると、迷った時点で作業が止まります。判断が必要な取引だけ税理士に上げる運用にすれば止まりません。

経理を採用する前に、いくらで回るか確かめてください。

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