経理代行の契約前に確認する契約書の条項
トラブルになるのは料金より「どこまでやるか」の認識違いと、辞めるときにデータが返ってこないことです。業務範囲と件数・再委託の可否・データの帰属と返還・解約の予告期間の4点を必ず確認してください。
見るべきは「業務範囲」「再委託」「データの帰属」「解約」の4つです
経理を外に出す契約でトラブルになるのは、料金より「どこまでやるか」の認識違いと、辞めるときにデータが返ってこないことです。契約書では①業務範囲と件数 ②再委託の可否 ③データの帰属と返還 ④解約の予告期間——この4つを必ず確認してください。
1. 業務範囲と件数
最も揉めるところです。「記帳代行」という言葉の指す範囲が、会社ごとに違います。
| 確認すること | 望ましい記載 |
|---|---|
| 業務の内容 | 「仕訳の入力」「証憑の整理」など具体的に列挙 |
| 含まれる仕訳件数 | 「月200件まで」と数字で明記 |
| 超過時の単価 | 「1仕訳あたり◯円」 |
| 決算・申告 | 含むか含まないか。含まないなら別途いくらか |
| 年末調整・法定調書 | 別料金が通常。金額を明記 |
| 納期 | 「証憑受領後◯営業日以内に月次を締める」 |
| 証憑の受け渡し方法 | データか紙か。紙の場合の送料負担 |
2. 再委託の可否
受注した会社が、実際の作業を別の会社や個人に出すことがあります。海外の拠点で処理される場合もあります。
- 再委託を認めるか — 認める場合、事前の承諾を要するか。
- 再委託先の管理責任 — 元請けが責任を負うことを明記する。
- 作業場所 — 国内か海外か。個人情報を含む場合は特に確認が必要です。
再委託そのものが悪いわけではありません。知らないうちに再委託されている状態が問題です。
3. データの帰属と返還
解約時にトラブルになる最大の論点です。
| 確認すること | なぜ |
|---|---|
| 会計データは誰のものか | 「委託者に帰属する」と明記されているか |
| 解約時の返還方法 | どの形式で(CSV・PDF・会計ソフトのバックアップ)、いつまでに |
| 返還費用 | 無償か有償か |
| 会計ソフトの契約名義 | 受託側の名義だと、解約と同時に使えなくなります |
| 預けた証憑の返却 | 原本を預けている場合の返却時期 |
会計ソフトは自社名義で契約しておくのが最も確実です。そうすれば、委託先が変わってもデータは自社に残ります。税理士を変えるときの実務は税理士との契約を解除するときの引き継ぎにまとめています。
4. 解約の条件
- 予告期間 — 1〜3か月前の通知が一般的。6か月前など長すぎる設定は要注意です。
- 最低契約期間 — 「初回1年間は解約不可」といった条項の有無。
- 年払いの精算 — 中途解約した場合の返金の有無。
- 自動更新 — 更新を止める場合の通知期限。
そのほか確認したい条項
| 条項 | ポイント |
|---|---|
| 秘密保持 | 期間(契約終了後も継続するか)、対象の範囲 |
| 個人情報の取扱い | 従業員の給与データを扱う場合は必須。委託先の監督義務は自社にあります |
| 損害賠償の上限 | 「委託料の◯か月分を上限」とされていることが多い。誤りによる加算税は自社負担になるのが通常 |
| 免責事項 | 資料の提出遅延による納期遅れ、資料の不備による誤りなど |
| 報告義務 | 月次でどんな資料を出すか |
| 担当者 | 窓口が誰か。変更時の通知 |
税理士業務が含まれる場合
決算・申告まで依頼する場合、その部分は税理士との契約になります。記帳代行の会社と税理士が別なら、契約書も2本になるのが通常です。
1つの契約書で「記帳から申告まで」と書かれていて、相手が税理士でない場合は、その時点で問題があります(記帳代行は税理士法違反になるのか)。
契約前にやっておくこと
- 自社の月間仕訳件数を数える
- 頼みたい業務を具体的に列挙する
- 会計ソフトの契約名義を自社にしておく
- 見積りの内訳を書面でもらう
- 「判断が必要なときどうなるか」を質問する(記帳代行業者の選び方)
見積り時の確認項目は記帳代行の見積りで必ず確認する8項目に、費用の試算は仕訳件数からできます。
この記事に関するよくある質問
経理代行の契約書で最も重要な条項は何ですか?
業務範囲と件数、再委託の可否、データの帰属と返還、解約の予告期間の4つです。特にデータの帰属は解約時に揉める最大の論点で、会計ソフトが受託側の名義だと解約と同時に使えなくなります。自社名義で契約しておくのが確実です。
「その他付随する業務」という記載があれば安心ですか?
範囲は決まりません。何が入って何が入らないかを、契約前に具体的な作業名で確認してください。「うちの場合、請求書の発行は入りますか」と個別に聞くのが確実です。認識違いが最も多いトラブルの原因です。
記帳の誤りで加算税が出たら補償されますか?
損害賠償の上限が「委託料の◯か月分」と設定されているのが通常で、全額の補償は期待できません。加算税は自社負担になるのが一般的です。だからこそ、税務判断を含む部分で誰が責任を負うか(税理士が関与するか)が重要になります。