税理士との契約を解除するときの引き継ぎ
会計データと申告書の控えは会社のものです。返してもらうべき書類の一覧、切り替えるタイミング、データが出てこない場合の実務的な対応、費用の精算まで。不満の中身によっては税理士を変えない選択もあります。
会計データと申告書の控えは、会社のものです。必ず返してもらってください
税理士を変えるとき、実務で問題になるのはデータがそのまま出てこないことです。決算書・申告書の控え・総勘定元帳・固定資産台帳は、会社の帳簿として会社が保存すべきものですから、返却を求めて構いません。タイミングは決算・申告が終わった直後が最も揉めにくく、期の途中で切り替えると引き継ぎの手間と費用が増えます。
いつ切り替えるのがよいか
| タイミング | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| 決算・申告が終わった直後 | 最適 | 1期分が完結している。新しい税理士は期首から見られる |
| 期の途中(月次が終わった月末) | 可 | 可能だが、期中の処理方針を引き継ぐ手間がかかる |
| 決算作業の最中 | 避ける | 作業が中断し、決算が間に合わなくなるリスクがある |
| 税務調査の最中 | 避ける | 経緯を知る人がいなくなる。調査が終わってからにする |
返してもらうもの
次の書類は会社の帳簿書類です。保存義務は会社にあります(原則7年、欠損金が生じた事業年度は10年)。
| 区分 | 具体的なもの |
|---|---|
| 決算・申告 | 決算書、法人税・消費税・地方税の申告書の控え、勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書、受信通知(e-Taxのメール詳細) |
| 帳簿 | 総勘定元帳、仕訳日記帳、補助元帳 |
| 資産 | 固定資産台帳、繰延資産の明細 |
| 税務上の記録 | 欠損金の繰越額の明細、各種届出書の控え(青色申告承認、消費税の課税事業者選択・簡易課税の届出など) |
| 会計データ | 会計ソフトのバックアップファイル(可能なら) |
| 預けた原本 | 領収書・請求書・通帳のコピーなど、預けている証憑 |
会計データが出てこない場合
会計ソフトのデータそのものは、税理士事務所が自社のソフトで作成したものであるため、必ずしも同じ形式で渡す義務があるとは限りません。実務上の対応は次のとおりです。
- PDFや紙で受け取る — 総勘定元帳と決算書があれば、新しい税理士は期首残高を作れます。これで実務は回ります。
- CSVで出力してもらう — 仕訳データをCSVで受け取れれば、多くの会計ソフトに取り込めます。
- 自社でソフトを持つ — もともと自社名義で会計ソフトを契約していれば、この問題は起きません。次からはこの形にしておくのが確実です。
手順
- 次の税理士を先に決める — 空白期間を作らないためです。決めてから解約を伝えます。
- 契約書の解約条項を確認する — 予告期間(1〜3か月前など)や、年払いの場合の精算方法を確認します。
- 解約を伝える — 理由を詳しく説明する義務はありません。「社内の体制を見直すため」で十分です。相手を批判しないほうが、返却がスムーズです。
- 返却リストを渡す — 上の表をそのまま渡すと、行き違いが減ります。
- 受け取ったものを確認する — 年度ごとに揃っているか。抜けがあればその場で依頼します。
- 新しい税理士に引き継ぐ — 資料一式と、これまでの処理方針(継続している会計処理)を伝えます。
費用の精算
- 顧問料 — 月額であれば解約月まで。年払いの場合は契約書の定めによります。
- 決算料 — 決算・申告が完了していれば発生します。着手済みで完了していない場合は、契約書または協議によります。
- 資料の返却費用 — 通常は発生しませんが、郵送費を求められることはあります。
変えるべきか迷っている場合
不満の中身によって、変えるべきかどうかは変わります。
| 不満 | 考え方 |
|---|---|
| 連絡が返ってこない・訪問が無い | 契約内容と実態が合っていない可能性。まず希望を伝えてみる価値はある |
| 料金が高い | 業務範囲との対応で判断する。記帳が含まれているかで金額の意味が変わる |
| 節税の提案が無い | 顧問の範囲に含まれているか確認。含まれていないなら、そもそも契約の問題 |
| 記帳を自社でやるのが負担 | 税理士を変えるより、記帳の入力だけを外に出すほうが早い場合がある |
| AI・クラウドに対応していない | 使いたいソフトへの対応可否を確認する。対応できないなら変更の理由になる |
最後の行が実務ではよくあります。税理士との関係に不満はないが、記帳の入力が社内で回らないというケースです。この場合、契約を変えずに入力だけを外に出す方法があります。記帳だけ頼むという形です。判断材料は仕訳件数からの試算で確認できます。
この記事に関するよくある質問
税理士を変えるとき、何を返してもらえばいいですか?
決算書、申告書の控え、勘定科目内訳明細書、総勘定元帳、固定資産台帳、欠損金の繰越額の明細、各種届出書の控え、預けている証憑です。特に届出書の控え(消費税の簡易課税選択、青色申告承認など)は見落とされやすく、無いと新しい税理士が判断できません。
切り替えるタイミングはいつがいいですか?
決算・申告が終わった直後が最適です。1期分が完結しているため、新しい税理士は期首から見られます。決算作業の最中や税務調査の最中は避けてください。作業が中断したり、経緯を知る人がいなくなったりします。
会計ソフトのデータを渡してもらえない場合は?
総勘定元帳と決算書をPDFや紙で受け取れれば、新しい税理士は期首残高を作れるため実務は回ります。仕訳データをCSVで出力してもらえれば多くのソフトに取り込めます。次からは自社名義で会計ソフトを契約しておくと、この問題は起きません。