業種別 ・ 約7分

医療法人・クリニックの記帳で難しい3つのこと

社会保険診療報酬は非課税・自由診療は課税という区分、約2か月遅れの入金と未収金、個人開業医と医療法人の違い。非課税売上が大半のため、高額機器を買う期は仕入税額控除の方式選択が税額を左右します。

まず結論

難所は「保険と自由診療の区分」「約2か月遅れの入金」「個人と医療法人の違い」です

クリニックの記帳は社会保険診療報酬が非課税、自由診療が課税という区分から始まります。入金は診療月から約2か月遅れるため未収金の管理が必須です。さらに個人開業医と医療法人では、院長への支払・生活費の扱い・申告がすべて違います。この3点を押さえれば全体像が掴めます。

1. 消費税の区分

収入消費税
社会保険診療報酬非課税
労災・自賠責非課税
予防接種・健康診断課税
診断書などの文書料課税
美容目的の診療課税
自費の薬・物販課税
介護保険の一部サービス非課税のものがある
非課税売上が大半を占めるため、課税売上割合が低くなります。 その結果、仕入にかかった消費税を全額は控除できません(個別対応方式か一括比例配分方式で計算)。高額な医療機器を購入した期は、この計算方法の選択が税額に大きく影響します。

2. 入金サイクルと未収金

診療月の2か月後に入金されるため、その間は未収金です。

  • 診療月に売上と未収金を計上(レセプト請求額)
  • 約2か月後に入金、未収金を消込
  • 返戻・査定による減額の調整を必ず行う — これを忘れると未収金が毎年積み上がります
  • 窓口負担分(患者から受け取る一部負担金)は即時入金

未収金残高が実際のレセプト請求額と大きく乖離している場合、過去の調整漏れです。決算前に必ず突合してください。

3. 個人開業医と医療法人

項目個人開業医医療法人
院長への支払事業主貸(経費にならない)役員報酬(損金)
報酬の変更期首から3か月以内。期中変更は原則不可
生活費の引き出し事業主貸(事業用口座から生活費を引き出したできない。役員貸付金になる
家族への給与青色事業専従者給与の届出が必要通常の従業員・役員として
申告所得税の確定申告(3月15日)法人税(決算日から2か月)
社会保険診療報酬の特例一定の要件で概算経費の特例同様の特例がある

医療法人化した直後に最も混乱するのが「生活費の引き出し」です。個人時代と同じ感覚で口座から引き出すと、すべて役員貸付金になり、認定利息の問題も生じます。

その他のクリニック特有の処理

項目処理
医薬品・診療材料期末在庫は棚卸資産。金額が大きい科では必須
高額医療機器固定資産。特別償却や税額控除の対象になることがある
リース契約内容による。所有権移転外リースは資産計上が原則
電子カルテ・レセコンソフトウェアは無形固定資産(ソフトウェアの購入
学会・研修研修費。家族同伴の観光部分は経費にならない
医師会の会費諸会費
白衣のクリーニング福利厚生費または消耗品費(制服・作業着のクリーニング代
医療廃棄物の処理ゴミ処理・産業廃棄物の処理費

外注する場合の確認

  • 医科・歯科の対応経験があるか
  • レセプトデータと会計の売上をどう突合するか
  • 課税売上割合の計算と、仕入税額控除の方式選択に対応できるか
  • 未収金の管理をどちらが行うか
  • 医療法人の場合、役員報酬・貸付金の管理をどうするか

特に3番目は、高額機器を購入する期に税額を左右します。これは税務判断なので、税理士が関与しない形では対応できません記帳代行は税理士法違反になるのか)。

歯科に特化した論点は歯科医院の記帳・経理で難しい3つのことに、選び方は記帳代行業者の選び方にまとめています。費用は仕訳件数から試算できます。


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よくある質問

この記事に関するよくある質問

クリニックの消費税で注意することは何ですか?

社会保険診療報酬・労災・自賠責は非課税、予防接種・健康診断・診断書などの文書料・美容目的の診療・自費の薬は課税です。非課税売上が大半を占めるため課税売上割合が低くなり、仕入にかかった消費税を全額は控除できません。高額な医療機器を購入する期は計算方式の選択が税額に大きく影響します。

医療法人になると何が変わりますか?

院長への支払が事業主貸から役員報酬になり損金にできますが、期首から3か月以内に決めた金額を期中に変更できません。また個人時代のように口座から生活費を引き出すことができず、引き出すと役員貸付金になり認定利息の問題も生じます。

未収金の残高が実際の請求額と合いません。

返戻や査定による減額の調整漏れです。レセプト請求額で未収金を計上した後、実際の入金額との差額を調整しないと未収金が積み上がります。決算前にレセプト請求額と突合してください。

経理を採用する前に、いくらで回るか確かめてください。

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