業種別 ・ 約7分

不動産業の記帳で難しい3つのこと

住宅の家賃は非課税・事務所は課税という消費税の区分、大規模修繕が修繕費か資本的支出か、賃料の期間帰属。売却時に取得費を証明できるかで税額が大きく変わるため、取得時の資料は保存期間が過ぎても捨てられません。

まず結論

難所は「消費税の区分」と「修繕費か資本的支出か」です

不動産業の記帳が特殊なのは、同じ家賃でも住宅なら非課税、事務所・店舗なら課税という点です。土地の譲渡・貸付も非課税のため、課税売上割合が下がり、仕入税額控除の計算方法が変わることがあります。もう一つの難所は大規模修繕を一括で費用にできるかどうか——金額が大きいため、判定を誤ると税額への影響も大きくなります。

1. 消費税の区分

取引消費税
住宅の家賃非課税
事務所・店舗の家賃課税
駐車場課税(住宅に付随する一定のものは非課税)
土地の譲渡・貸付非課税
建物の譲渡課税
仲介手数料課税
礼金(住宅)非課税
更新料(住宅)非課税
共益費家賃と同じ扱いになるのが原則
住宅と事業用が混在する物件では、按分が必要です。 1棟の中に住居と店舗がある場合、床面積などの合理的な基準で分けます。基準を決めて継続することが重要で、年度ごとに変えると説明できなくなります。

2. 修繕費か資本的支出か

金額が大きくなりやすいため、不動産業で最も税額に影響する判断です。

性質扱い
原状回復修繕費(一括で費用)クロスの張替え、畳の交換、設備の修理
価値の増加・耐用年数の延長資本的支出(資産計上して償却)間取りの変更、グレードアップ、増築
判定が難しい場合形式基準がある金額や周期による判定基準が定められています

大規模修繕を一括で費用にすると、税務調査で否認されるリスクがあります。工事の内訳書を保存し、原状回復部分と改良部分を分けておくと説明できます(修理代(修繕費か資本的支出か))。

3. 賃料の期間帰属

家賃は前月末に翌月分を受け取るのが一般的です。受け取った月ではなく、対応する月の売上として計上します。

  • 3月末に受け取った4月分の家賃 → 前受金(3月決算なら翌期の売上)
  • 期末時点で未収の家賃 → 未収入金として計上
  • 敷金・保証金 → 預り金(負債)。償却される部分だけが売上

これを処理しないと、決算月の売上が1か月分ずれます。

4. 物件ごとの損益管理

複数物件を持つ場合、物件ごとに収支を分けて把握することが実務上重要です。

  • 会計ソフトの部門機能を使い、物件ごとに区分する
  • 共通費(本社経費、借入利息など)の配賦基準を決める
  • 物件別の利回りが見えると、売却・保有の判断ができる

税務上は全体で計算しますが、経営判断のためには物件別が必要です。

その他の不動産特有の処理

項目処理
物件の取得土地と建物に区分。建物だけが減価償却の対象。区分は契約書か固定資産税評価額の比率で
仲介手数料(取得時)取得価額に含める(土地・建物に按分)
不動産取得税・登録免許税取得価額に含めるか費用にするか選択できる
固定資産税租税公課。売買時の精算金は取得価額に含める
借入金の返済元本は負債の減少、利息だけが費用(借入金の返済
原状回復費用敷金から充当した分の処理(退去時の原状回復費用
管理委託料支払手数料。課税仕入れ
火災保険料期間対応。長期契約は前払費用(火災保険・自動車保険の保険料

売却時が最も影響が大きい

物件を売却するとき、取得費が正確に分かるかどうかで税額が大きく変わります。取得時の契約書、仲介手数料の領収書、資本的支出の記録——これらが揃っていないと、取得費を証明できません。

取得時の資料は、保存期間が過ぎても捨てないでください。売却まで何十年も必要になります(帳簿の保存期間と保存方法)。

外注する場合の確認

  • 住宅と事業用の按分をどう管理するか
  • 物件ごとの部門管理に対応できるか
  • 修繕費と資本的支出の判定を誰が行うか
  • 課税売上割合の計算に対応できるか

特に4番目は、非課税売上が多い不動産業では避けて通れません。選び方は記帳代行業者の選び方、費用は仕訳件数から試算できます。不動産の記帳・経理もあわせてご覧ください。


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よくある質問

この記事に関するよくある質問

家賃の消費税はどうなりますか?

住宅の家賃は非課税、事務所・店舗の家賃は課税です。駐車場は原則課税(住宅に付随する一定のものは非課税)、土地の譲渡・貸付は非課税、建物の譲渡は課税です。住宅と事業用が混在する物件は床面積などの合理的な基準で按分し、基準を継続してください。

大規模修繕は一括で経費にできますか?

原状回復にあたる部分は修繕費として一括で費用にできますが、価値の増加や耐用年数の延長にあたる部分は資本的支出として資産計上します。工事の内訳書を保存し、原状回復部分と改良部分を分けておくと説明できます。

物件の取得時の資料はいつまで保存しますか?

売却するまでです。帳簿の保存期間(原則7年、欠損金が生じた事業年度は10年)を過ぎても捨てないでください。売却時に取得費を証明できないと、税額が大きく変わります。契約書、仲介手数料の領収書、資本的支出の記録が必要です。

経理を採用する前に、いくらで回るか確かめてください。

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