歯科医院の記帳・経理で難しい3つのこと
保険と自由診療の消費税区分、約2か月遅れの入金と未収金の管理、技工料の処理。この3つを押さえれば残りは一般的な記帳と同じです。個人開業医と医療法人の違い、外注時の確認事項もまとめました。
難しいのは「保険と自由診療の区分」と「技工料の処理」です
歯科医院の記帳が他業種と違うのは3点です。①保険診療は非課税・自由診療は課税で、消費税の区分が売上ごとに分かれる ②社会保険診療報酬支払基金からの入金は約2か月遅れで未収金の管理が要る ③技工料は外注費だが、源泉徴収の要否で扱いが変わる。この3つを押さえれば、あとは一般的な記帳と同じです。
1. 保険診療と自由診療の区分
| 区分 | 消費税 | 例 |
|---|---|---|
| 保険診療 | 非課税 | 健康保険が適用される診療 |
| 自由診療 | 課税 | インプラント、審美目的の処置、矯正(美容目的のもの) |
| 物販 | 課税 | 歯ブラシ、歯磨き粉などの販売 |
売上を区分して計上する必要があります。さらに課税売上割合が変わると、仕入税額控除の計算方法にも影響します。自由診療の比率が高い医院ほど、この管理が重要になります。
2. 入金サイクルと未収金
保険診療の収入は、診療した月から約2か月後に入金されます。この間、未収金として計上する必要があります。
| 時期 | 処理 |
|---|---|
| 診療月 | 売上と未収金を計上(レセプト請求額ベース) |
| 翌月 | レセプト請求 |
| 約2か月後 | 入金。未収金を消し込む |
| 返戻・査定があった場合 | 差額を調整。この処理を忘れると未収金が残り続けます |
未収金の残高が年々増えている医院は、返戻・減点の調整が漏れています。決算前に必ず残高を確認してください。
3. 技工料の処理
歯科技工所への支払は外注費です。ただし確認すべき点があります。
- 相手が法人か個人か — 個人の技工士に支払う場合、源泉徴収が必要になるケースがあります。
- 消費税 — 課税仕入れです。ただしインボイス登録の有無で控除の扱いが変わります(インボイス制度で記帳がどう変わったか)。
- 院内技工の場合 — 技工士を雇用していれば給与です。外注費と給与の線引きは業務委託への支払にまとめています。
その他の歯科特有の科目
| 支出 | 処理 |
|---|---|
| ユニット(診療台) | 固定資産。金額と使用開始日で減価償却 |
| デジタルレントゲン・CT | 固定資産。高額なため特別償却や税額控除の対象になることがある |
| 歯科材料 | 消耗品費または材料費。期末在庫がある場合は棚卸が必要 |
| 滅菌器・オートクレーブ | 金額により消耗品費または固定資産 |
| リース | 契約の内容による。所有権移転外リースは資産計上が原則 |
| 学会・研修の費用 | 研修費。家族同伴の旅行部分は経費になりません |
| 歯科医師会の会費 | 諸会費 |
個人開業医と医療法人で違う点
| 項目 | 個人 | 医療法人 |
|---|---|---|
| 院長への支払 | 事業主貸(経費にならない) | 役員報酬(損金。期中変更は原則不可) |
| 申告 | 所得税の確定申告 | 法人税の申告(決算日から2か月) |
| 生活費の引き出し | 事業主貸(事業用口座から生活費を引き出した) | できない。役員貸付金になる |
| 専従者給与 | 青色事業専従者給与の届出が必要 | 通常の役員・従業員として処理 |
記帳を外に出す場合の注意
歯科の記帳では、レセプトの数字と会計の売上を合わせる作業が発生します。これを理解している事務所かどうかで、月次の負担が変わります。依頼前に次を確認してください。
- 歯科・医科の対応経験があるか
- 保険と自由診療の区分をどう管理するか
- レセプトデータをどう受け渡すか
- 未収金の管理をどちらが行うか
選び方の全体は記帳代行業者の選び方に、費用の目安は仕訳件数から試算できます。医療法人・クリニック全般については医療法人・クリニックの記帳もご覧ください。
この記事に関するよくある質問
歯科医院の記帳で特に難しいのはどこですか?
3つあります。保険診療は非課税・自由診療は課税で売上ごとに消費税の区分が分かれること、社会保険診療報酬支払基金からの入金が約2か月遅れるため未収金の管理が必要なこと、技工料が外注費だが相手が個人だと源泉徴収の要否が絡むことです。
未収金の残高が毎年増えていくのはなぜですか?
返戻や査定による減額の調整が漏れているためです。レセプト請求額で未収金を計上した後、実際の入金額との差額を調整しないと未収金が残り続けます。決算前に必ず残高を確認してください。
矯正治療は課税ですか非課税ですか?
目的で判定が分かれます。咀嚼障害の治療など医療上の必要があるものと、審美目的のものでは扱いが異なります。患者ごとの区分を記録に残しておくと、後から説明できます。