実務の手順 ・ 約6分

決算書の数字が前期と繋がらないとき

正しいのは前期の決算書です。直すのは当期の期首残高。原因の大半は決算整理仕訳が当期に反映されていない、繰越処理をやり直していない、期首残高の手入力ミスの3つです。科目別の確認手順をまとめました。

まず結論

正しいのは前期の決算書です。当期の期首残高を、そちらに合わせます

期首残高が前期末と合わないとき、直すのは当期の期首残高であって、前期の決算書ではありません。前期の決算書は申告済みで、税務署に提出された数字だからです。よくある原因は①決算整理仕訳を当期側に反映していない ②前期の修正を期首に反映していない ③繰越処理を実行していないの3つで、ほとんどがこれで説明がつきます。

大前提:どちらを正とするか

対象扱い
前期の決算書・申告書これが正。提出済みで、税務署が持っている数字
当期の期首残高前期末に一致させる。ズレていればこちらを直す
前期の決算書のほうを書き換えてはいけません。 申告済みの数字を変えると、提出した申告書と帳簿が食い違います。前期の内容自体に誤りがある場合は、修正申告または更正の請求という別の手続きになります(前任者の仕訳が間違っていたと分かったときの直し方)。

原因1:決算整理仕訳が当期に反映されていない(最多)

決算のときに税理士が加えた仕訳が、会社側の会計データに入っていないパターンです。

  • 減価償却費の計上
  • 未払費用・未払法人税等の計上
  • 棚卸資産の振替
  • 貸倒引当金の設定
  • 消費税の精算(税抜経理の場合)

税理士が自分のソフトで決算を組み、その修正が会社側に戻っていないと必ずズレます。「決算整理後の試算表」をもらって、当期の期首残高と突き合わせてください。

原因2:繰越処理が実行されていない

会計ソフトには「次年度への繰越」処理があります。これを実行せずに新年度の入力を始めると、期首残高がゼロのままだったり、前年度の途中の数字が入ったりします。

  • 弥生会計 — 「繰越処理」を実行。実行後に前年度を修正した場合は再繰越が必要
  • クラウド会計 — 年度切替は自動だが、前年度を修正すると期首残高も自動更新される。逆に手入力の期首残高があると更新されない
最も多い事故が「繰越後に前年度を直した」ケースです。 繰越は実行した時点のデータをコピーするため、その後の修正は反映されません。前年度を触ったら、必ず繰越をやり直してください。

原因3:期首残高を手入力している

会計ソフトを途中から導入した場合、期首残高は手入力になります。ここで入力ミスや入力漏れがあると、初年度からずっとズレたままになります。

特に漏れやすいのは、預り金(源泉所得税・社会保険料)、未払法人税等、繰越利益剰余金です。貸借が合わない場合、差額がそのまま「その他」に押し込まれていることがあります。

確認の手順

  1. 前期の貸借対照表を用意する — 決算書または申告書の添付書類。
  2. 当期の期首残高一覧を出力する — 会計ソフトの「開始残高」または期首時点の残高試算表。
  3. 科目ごとに突き合わせる — 上から順に。金額の大きい科目から見ると早く見つかります。
  4. 差額のある科目を特定する — 1科目だけなら原因1か3。全体がずれているなら原因2。
  5. 差額の金額で当たりをつける — 減価償却費の年額と一致すれば原因1。詳しくは通帳残高と帳簿が合わないときの原因の探し方と同じ考え方が使えます。

特に注意する科目

科目ズレる理由
減価償却累計額/固定資産決算で計上した償却費が会社側に反映されていない
未払法人税等決算で確定した税額が期首に入っていない
繰越利益剰余金当期純利益が振り替えられていない。ここがずれると全体がずれる
預り金年末調整の精算、社会保険料の翌月納付分
仮払消費税・仮受消費税税抜経理で、決算の精算仕訳が入っていない
棚卸資産期末棚卸の振替が反映されていない

放置するとどうなるか

期首がずれたまま1年進むと、当期の決算書も間違った数字になります。貸借対照表が合わない決算書は、金融機関の審査で真っ先に指摘されますし、税務調査でも管理体制を疑われます。

さらに、翌期の期首もずれるため、ズレが毎年繰り越されて累積します。何年も経ってから直そうとすると、原因の特定が非常に困難になります。気づいた期のうちに直してください。

毎年ずらさないために

  • 決算後、必ず「決算整理後の試算表」をもらう — そして当期の期首残高と突き合わせる。この1回の確認で、ほぼすべて防げます。
  • 前年度を修正したら、繰越をやり直す
  • 期首残高の照合を、年度初めの定型作業にする — 4月(3月決算なら)の最初にやることリストに入れておく

記帳を外部に出している場合、この照合は外注先が行います。社内で1人が抱えていると、確認する人がいないまま何年も進みがちです。体制の作り方は経理が1人しかいない会社が休職・退職に備える方法にまとめています。


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よくある質問

この記事に関するよくある質問

期首残高が前期末と合いません。どちらを直すべきですか?

当期の期首残高を直します。前期の決算書は申告済みで税務署に提出された数字なので、そちらを書き換えてはいけません。書き換えると提出した申告書と帳簿が食い違います。前期の内容自体に誤りがある場合は修正申告または更正の請求という別の手続きになります。

期首残高がずれる原因で最も多いものは?

決算整理仕訳が当期に反映されていないケースです。税理士が決算時に加えた減価償却費・未払法人税等・棚卸資産の振替などが、会社側の会計データに戻っていないと必ずずれます。決算整理後の試算表をもらって突き合わせてください。

繰越処理をやり直す必要があるのはどんなときですか?

繰越を実行した後に前年度を修正した場合です。繰越は実行時点のデータをコピーするため、その後の修正は反映されません。前年度を触ったら必ず再繰越してください。これが事故として最も多いパターンです。

経理を採用する前に、いくらで回るか確かめてください。

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