実務の手順 ・ 約7分

前任者の仕訳が間違っていたと分かったときの直し方

当期分は直せば済みますが、申告済みの年度は帳簿を書き換えても申告書は変わりません。税額が増えるなら修正申告、減るなら更正の請求、影響しないなら当期で振替。ケース別の判断と、やってはいけない処理をまとめました。

まず結論

「申告済みの年度か」で扱いが変わります。当期の分は直す、過去の分は判断が要ります

間違いを見つけたら、まずそれが申告済みの事業年度か、当期かを確認してください。当期分は会計ソフトで直せば済みます。申告済みの年度は、帳簿を書き換えても申告書は変わりません。税額が増える誤りなら修正申告、減る誤りなら更正の請求、税額に影響しない誤りなら当期で振り替える——この3つに分かれます。

まず、どの年度の誤りか分ける

誤りの年度対応
当期(申告前)会計ソフトで直接修正する。決算までに直せば影響なし
過去(申告済み)で税額が増える修正申告。自主的に出せば加算税が軽減される
過去(申告済み)で税額が減る更正の請求。法定申告期限から原則5年以内
過去(申告済み)で税額に影響しない当期の帳簿で振り替える。申告のやり直しは不要
過去の年度の帳簿を後から書き換えても、提出済みの申告書は変わりません。 帳簿だけ直しても税額は動かず、かえって帳簿と申告書が食い違います。過去分は「申告をどうするか」から考えてください。

ケース別の対応

ケース1:科目が違うだけ(税額に影響しない)

「通信費にすべきものを消耗品費にしていた」のような誤りです。費用の総額が変わらないため、法人税額に影響しません。

  • 過去の年度は、そのままにしておきます。
  • 当期以降、正しい科目に統一します。
  • ただし交際費だけは別です。損金算入に上限があるため、他の科目から交際費に振り替わると税額が変わります。

ケース2:消費税の区分を間違えていた

課税・非課税・不課税・軽減税率の区分ミスは、納付する消費税額が直接変わります。金額によっては修正申告または更正の請求が必要です。

特に間違えやすいのは、収入印紙(郵便局で買えば非課税、金券ショップなら課税)、賞与や給与(不課税)、飲食代(店内飲食は10%、テイクアウトは8%)です。

ケース3:計上時期がずれていた

期末近くの売上や費用が、翌期に計上されているケースです。両方の年度の利益が動くため、税額に影響します。金額が大きければ修正申告または更正の請求を検討します。

税務調査で最も指摘されやすい論点でもあります。売上の計上基準(出荷基準か検収基準か)を決めて、継続して適用してください。

ケース4:資産計上すべきものを費用にしていた

10万円以上の備品を消耗品費で処理していた、大規模な修繕を一括で修繕費にしていた、といったケースです。その年度の利益が過少になっているため、修正申告の対象になります。

判定の基準は10万円前後のパソコン・備品修理代(修繕費か資本的支出か)にまとめています。

ケース5:私的な支出が経費に入っていた

これは単なる誤りではなく、放置すると重い扱いを受ける可能性があります。意図的でなくても、指摘されれば否認されます。金額が大きい場合や継続している場合は、自主的に修正申告を出すことを検討してください。

修正申告と更正の請求

項目修正申告(税額が増える)更正の請求(税額が減る)
期限特に定めなし(早いほど有利)法定申告期限から原則5年
加算税自主的に出せば軽減。調査の通知後は重くなるなし
延滞税納付が遅れた分だけかかるなし
結果提出すれば確定税務署の審査を経て、認められれば還付

更正の請求は「請求すれば必ず通る」ものではなく、税務署が内容を確認したうえで判断します。根拠資料を揃えて出す必要があります。

当期の帳簿でどう処理するか

過去の誤りを当期で調整する場合、前期損益修正として処理するのが一般的です。金額が小さければ、該当する科目に含めて処理することもあります。

いずれの場合も、なぜその処理をしたのかを記録に残してください。摘要欄に「◯年◯月分 科目訂正」と書いておくだけで、後から見た人(税務調査を含む)が経緯を追えます。

そもそも間違いを減らすには

前任者の処理が間違っていたと分かるのは、多くの場合誰もチェックしていなかったからです。1人で入力して1人で完結する体制では、誤りが何年も残ります。

入力を外に出す、あるいは入力は社内でチェックだけ外に出す形にすれば、月次の段階で誤りが見つかります。自社入力+チェックという頼み方もあります。費用の目安は仕訳件数から試算できます。


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よくある質問

この記事に関するよくある質問

過去の年度の仕訳を後から直してもいいですか?

帳簿だけ直しても、提出済みの申告書は変わりません。かえって帳簿と申告書が食い違います。まず「申告をどうするか」から考えてください。税額が増える誤りなら修正申告、減る誤りなら更正の請求、税額に影響しない誤りなら当期の帳簿で振り替えます。

科目を間違えていただけの場合も申告し直す必要がありますか?

費用の総額が変わらなければ法人税額に影響しないため、過去の年度はそのままで構いません。当期以降を正しい科目に統一してください。ただし交際費は損金算入に上限があるため、他の科目から交際費に振り替わる場合は税額が変わります。

更正の請求はいつまでできますか?

法定申告期限から原則5年以内です。請求すれば必ず通るものではなく、税務署が内容を確認したうえで判断するため、根拠資料を揃えて提出する必要があります。

経理を採用する前に、いくらで回るか確かめてください。

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