実務の手順 ・ 約6分

通帳残高と帳簿が合わないときの原因の探し方

全件を見直す必要はありません。差額と同額の取引を検索する、差額が2で割り切れるか(貸借の逆計上)、9で割り切れるか(桁や数字の入れ替え)——この3つで大半の原因に当たりがつきます。現金が合わない場合の扱いも整理しました。

まず結論

差額の「金額そのもの」が原因を教えてくれます

通帳と帳簿が合わないとき、闇雲に全件を見直す必要はありません。差額と同じ金額の取引を検索する——これで大半は見つかります。見つからなければ差額が2で割り切れるか(貸借の逆計上)、9で割り切れるか(桁や数字の入れ替え)を確かめます。この3つで、原因のほとんどに当たりがつきます。

手順1:どの時点から合っていないかを特定する

全期間を探すのは非効率です。合っていた時点まで遡って、範囲を狭めます。

  1. 月末ごとの通帳残高と帳簿残高を並べる
  2. 一致している最後の月を見つける
  3. その翌月が調査対象の範囲

会計ソフトの預金出納帳を月別に表示すれば、数分で特定できます。ここを飛ばして全件を見直すと、何時間もかかります。

手順2:差額の金額で原因を絞る

差額の性質疑うべき原因確認方法
差額と同額の取引がある入力漏れ、または二重入力その金額で検索する。1件あれば漏れ、2件あれば二重
差額が2で割り切れる貸借の逆計上。入金を出金として入れている(またはその逆)差額÷2の金額を検索する
差額が9で割り切れる桁違いか数字の入れ替え。1,000を10,000、45を54など近い金額の取引を目視で確認
差額が小さい(数円〜数百円)手数料の計上漏れ、端数処理振込手数料・口座維持手数料を確認
月末だけ合わない締めの処理、未達(月末の入出金が翌月に反映)翌月初の動きを確認
「2で割り切れる」「9で割り切れる」は簿記の古典的な検算です。 貸借を逆に入れると差額は正しい金額の2倍になり、数字を入れ替えたり桁を間違えたりすると差額は必ず9の倍数になります。会計ソフトの時代でも、入力ミスの性質は変わりません。

手順3:それでも見つからないときの確認順

  1. 他の口座と混同していないか — 複数口座がある会社では、A銀行の取引をB銀行に入力していることがあります。
  2. 現金と預金を取り違えていないか — 現金で払ったものを預金から出したことにしている、またはその逆。
  3. 自動連携の二重取り込み — 銀行連携で取り込んだ取引を、手入力でも登録している。クラウド会計で最も多い原因です。
  4. 期首残高が間違っている — 前期の決算書と期首残高が一致しているか。ここがずれていると、全期間が合いません。
  5. 締め後の訂正 — 前月分を後から修正して、月次の締めが崩れている。
  6. 入金・出金の日付ズレ — 通帳の日付と伝票の日付が違う。特に月をまたぐと残高が合いません。

現金が合わない場合は少し扱いが違います

預金と違い、現金は物理的に数えられるのが利点です。手順は次のとおりです。

  • 実際の現金を数える(金種表を作ると再確認できます)
  • 帳簿残高と比較する
  • 差額の原因を探す(領収書のない支出、釣銭の間違い、記帳漏れ)
  • 原因が分からない分は現金過不足で処理し、期末までに判明しなければ雑収入または雑損失に振り替えます

詳しくは現金が合わないとき(現金過不足)にまとめています。現金残高がマイナスになっている場合は、必ずどこかが間違っています。物理的にありえないためです。

合わせるために絶対にやってはいけないこと

やってはいけないなぜ
差額を雑費で埋める原因が永久に分からなくなります。後から見た人(税務調査を含む)に説明できません
期首残高を書き換える前期の決算書と食い違います。前期の申告内容と帳簿が合わなくなります
合うまで金額を調整する元の取引の記録が失われます。原因の特定ができなくなります
合わないまま次の月へ進む差額が累積し、原因の切り分けが不可能になります

合わない状態を放置するとどうなるか

残高が合わない帳簿は、決算書の信頼性そのものを損ないます。金融機関の審査では真っ先に見られる箇所ですし、税務調査でも「管理ができていない会社」という前提で見られます。

また、原因が「入金の記帳漏れ」だった場合、それは売上の計上漏れである可能性があります。差額を放置することは、申告漏れを放置することにつながります。

毎月合わせる仕組みにする

ズレは、発生した月に見つければ数分で直せます。数か月分たまってから探すと、何日もかかります。月次で必ず残高を照合するという運用が、最も安いコストです。

社内でこの時間を取れない場合は、記帳の入力ごと外に出す方法があります。外部が入力すれば、月次の締めで必ず残高照合が行われます。仕訳件数から費用を試算できます。記帳が数か月止まっている場合は記帳が数か月遅れているときの取り戻し方から先に着手してください。


記帳・経理のご相談。 月間の仕訳件数・お使いの会計ソフト・業種をうかがえば、外注した場合の概算と、雇った場合との比較を無料でお出しします。 無料相談はこちら →
よくある質問

この記事に関するよくある質問

残高が合わないとき、どこから調べればいいですか?

まず月末ごとの通帳残高と帳簿残高を並べ、一致している最後の月を見つけて範囲を狭めます。次に差額の金額で原因を絞ります。差額と同額の取引があれば入力漏れか二重入力、2で割り切れるなら貸借の逆計上、9で割り切れるなら桁違いか数字の入れ替えです。

クラウド会計で残高が合わない原因で多いものは?

銀行連携で自動取り込みした取引を、手入力でも登録してしまう二重計上です。ほかに、複数口座がある場合の入力先の取り違え、現金と預金の取り違え、期首残高の誤りがあります。

どうしても原因が分からない差額はどう処理しますか?

預金の場合は必ず原因があるため、雑費などで埋めてはいけません。原因が分からなくなり、後から説明できなくなります。現金の場合は現金過不足で処理し、期末までに判明しなければ雑収入または雑損失に振り替えます。

経理を採用する前に、いくらで回るか確かめてください。

月間の仕訳件数・使っている会計ソフト・業種をうかがい、外注した場合の概算と、いま雇っている(雇おうとしている)場合との比較を無料でお出しします。会計ソフトの乗り換えは必要ありません。無理な勧誘はいたしません。