会計データをAIに渡すときのセキュリティ
権限は最小限に、操作履歴が残る形に、個人情報の取扱いを事前に決める。読み取りだけでも十分役立つため、書き込み権限は運用が固まってから最小限を与えます。委託先の監督義務は自社にあります。
入れてよいのは「読み取り権限」まで。書き込みと削除は人が承認する形にします
会計データをAIに扱わせるときの原則は3つです。①権限を最小限にする(読み取りだけで足りるなら書き込みを与えない) ②操作の履歴が残る形にする ③個人情報を含むデータの取扱いを事前に決める。特に給与データには従業員の個人情報が含まれるため、委託先の監督義務は自社にあります。
何が漏れると困るのか
| データ | リスク |
|---|---|
| 取引先名と金額 | 取引条件が外部に知られる。守秘義務契約に触れる可能性 |
| 従業員の給与 | 個人情報。安全管理措置と委託先の監督が必要 |
| 未公表の財務情報 | 赤字、資金繰り、借入の状況 |
| 顧客の個人情報 | 売掛帳に個人名が入る業種(医療・士業・教室など)は特に注意 |
| 銀行の認証情報 | 最も重大。AIに渡してはいけません |
権限設計の原則
| 操作 | AIに与えるか | 理由 |
|---|---|---|
| データの参照 | 与えてよい | 読むだけなら被害が限定的 |
| 仕訳の下書き作成 | 条件付きで可 | 人が確認してから確定する運用にする |
| 仕訳の確定 | 慎重に | 誤った仕訳が帳簿に入る |
| データの削除 | 与えない | 復元できない場合がある |
| 決算の確定・締め処理 | 与えない | 取り消しに手間がかかる |
| 銀行連携の設定変更 | 与えない | 認証情報に関わる |
| ユーザー権限の変更 | 与えない | 権限設計そのものが崩れる |
汎用チャットAIに貼り付ける場合
最も手軽で、最もリスクが高い使い方です。次を守ってください。
- 実名を伏せる — 「A社」「取引先1」に置き換える
- 金額を丸める — 具体的な金額が不要なら「約100万円」に
- 個人名は入れない — 給与・人事の相談は特に注意
- 学習に使わない設定を確認する — サービスによって設定箇所が違います
- そもそも実データを貼らない — 一般化した質問で足りることがほとんどです
汎用AIの限界についてはChatGPTに経理を任せてはいけない理由にまとめています。
会計ソフトのAI機能を使う場合
データがソフト内で完結するため、外部に貼り付けるより安全です。ただし確認すべき点があります。
- 利用規約でのデータの取扱い — 学習に使われるか、オプトアウトできるか
- アクセス権限の設定 — 誰がどの機能を使えるか
- 操作ログ — 誰がいつ何をしたかが残るか
- 保管場所 — 国内か海外か
外部の事務所・業者に任せる場合
委託先がAIを使っているかどうかも確認の対象です。
| 確認事項 | なぜ |
|---|---|
| 再委託の有無 | 知らないうちに別の会社が処理していることがある |
| 作業場所 | 国内か海外か。個人情報の越境移転の問題 |
| AIの利用状況 | どのサービスに、どこまでのデータを渡しているか |
| 秘密保持契約 | 期間、対象範囲、契約終了後の扱い |
| データの返還・削除 | 契約終了時にどうなるか |
契約書で確認すべき条項は経理代行の契約前に確認する契約書の条項にまとめています。個人情報を扱う業務を委託する場合、委託先の監督義務は自社にあります。「任せたから知らない」では済みません。
最低限やっておくこと
- 誰がどのデータにアクセスできるかを一覧にする — 会計ソフト、ネットバンキング、給与ソフト
- 退職者のアカウントを無効化する — 削除ではなく無効化(履歴を残すため)
- 銀行の認証情報は共有しない — 個別のIDを発行する
- AIに渡す前に「これが外に出て困るか」を考える — 判断に迷うなら渡さない
アクセス権の整理は、担当者が辞めたときの備えにもなります(経理が1人しかいない会社が休職・退職に備える方法)。セキュリティと事業継続は、同じ準備で両方カバーできます。
この記事に関するよくある質問
AIにどこまでの権限を与えていいですか?
データの参照と仕訳の下書き作成までです。データの削除、決算の確定、銀行連携の設定変更、ユーザー権限の変更は与えないでください。まず読み取り専用で試し、試算表の集計や異常値の検出といった用途から始めるのが安全です。
チャットAIに会計データを貼り付けても大丈夫ですか?
実名を伏せる、金額を丸める、個人名は入れない、学習に使わない設定を確認する——これらを守れば下調べには使えます。ただし、そもそも一般化した質問で足りることがほとんどです。銀行の認証情報は絶対に渡さないでください。
外部に経理を委託する場合、何を確認すべきですか?
再委託の有無、作業場所が国内か海外か、どのAIサービスにどこまでのデータを渡しているか、秘密保持契約の期間と範囲、契約終了時のデータの返還・削除です。個人情報を扱う業務では、委託先の監督義務は自社にあります。