会計ソフトを乗り換えるときのデータ移行
移せるのは残高とマスタまでで、過去の仕訳明細は移らないか補助科目や税区分が崩れます。旧ソフトは1年残すのが安全策。最も崩れやすい消費税の税区分の確認方法もまとめました。
移せるのは「残高」と「マスタ」です。過去の仕訳は移せないと考えてください
会計ソフトの乗り換えで期待外れになるのは、「過去のデータが全部そのまま移る」と思っていた場合です。実際に移るのは期首残高、勘定科目、取引先などのマスタまでで、過去の仕訳明細は移らないか、移っても補助科目や税区分が崩れることがほとんどです。旧ソフトのデータは残しておき、新ソフトは期首から始めるのが安全です。
移行できるもの・できないもの
| 対象 | 移行 | 備考 |
|---|---|---|
| 期首残高 | できる | 手入力でも確実。これが最重要 |
| 勘定科目マスタ | できる | 標準科目に寄せる作業が発生する |
| 取引先マスタ | できる | CSVで出力・取り込み |
| 固定資産台帳 | できることが多い | 取得日・耐用年数・未償却残高を確認 |
| 当期の仕訳 | ソフトによる | CSVで移せる場合がある。税区分の変換に注意 |
| 過去年度の仕訳 | 実質的に困難 | 旧ソフトを残すか、PDFで保存 |
| 補助科目・部門 | 崩れやすい | 体系が違うため再設計が必要 |
| 証憑の添付ファイル | 移らないことが多い | 別途ダウンロードして保存 |
移行の手順
- 期首(事業年度の開始日)に合わせる — 期中の移行は決算時に合算作業が発生します。
- 旧ソフトから出力する — 決算書、総勘定元帳、固定資産台帳、取引先一覧、当期の仕訳CSV。PDFとCSVの両方を取っておきます。
- 新ソフトで科目を整理する — 旧の科目名と新の標準科目の対応表を作ります。
- 期首残高を入力する — 前期の貸借対照表そのまま。貸借の一致を確認。
- 固定資産を登録する — 未償却残高が旧ソフトと一致するか確認。
- 銀行・カードを連携する(クラウド型の場合)
- 最初の1か月を入力して残高照合 — 通帳と一致すれば移行成功です。
税区分の変換に注意
仕訳CSVを移す場合、最も崩れやすいのが消費税の税区分です。
- ソフトごとに税区分のコード体系が違います
- インボイス対応で区分が増えたため、旧ソフトに無い区分があることがあります
- 変換を誤ると、消費税の申告額が変わります
移行後に、消費税の集計額が旧ソフトと一致するかを必ず確認してください。一致しなければ変換が失敗しています(インボイス制度で記帳がどう変わったか)。
乗り換えるべきか、そもそもの判断
| 理由 | 評価 |
|---|---|
| 銀行・カード連携で入力を減らしたい | 妥当。効果が大きい |
| 外注先・税理士を変えたいが対応していない | 妥当。ただし対応できる相手を探す選択肢もある |
| どこからでも数字を見たい | 妥当。クラウド型の利点 |
| 他社の請求書・経費精算と連携したい | 妥当 |
| 外注先に「乗り換えてほしい」と言われた | 理由を確認する。相手の効率のためだけなら、対応できる別の事務所を探すほうが早い |
| なんとなく古い気がする | 移行コストに見合わない可能性 |
移行にかかる手間
会社の規模によりますが、準備から最初の月次が締まるまで、実質1〜2か月を見ておいてください。並行して旧ソフトも動かすことになるため、その期間は負担が増えます。
この作業ごと外注するという選択もあります。期首残高の設定と税区分の変換は専門知識が要る部分で、誤ると1年間気づかないこともあります。記帳を外に出すタイミングと移行を重ねると、二度手間が避けられます。
費用の目安は仕訳件数から試算できます。ソフト別の外注手順は会計ソフト別にまとめています。
この記事に関するよくある質問
会計ソフトを乗り換えると過去のデータも全部移りますか?
移りません。移せるのは期首残高、勘定科目、取引先などのマスタまでです。過去年度の仕訳明細は実質的に移行困難で、補助科目や部門は体系が違うため崩れます。旧ソフトのデータは残しておき、新ソフトは期首から始めるのが安全です。
旧ソフトはすぐ解約していいですか?
1年残すのが実務上の安全策です。過去の数字を確認したくなる場面は必ず来ますし、税務調査で必要になる可能性もあります。少なくとも総勘定元帳と決算書をPDFで出力してから解約してください。
移行後に必ず確認すべきことは何ですか?
消費税の集計額が旧ソフトと一致するかです。ソフトごとに税区分のコード体系が違い、インボイス対応で区分も増えたため、仕訳CSVを移すと税区分が崩れやすくなります。一致しなければ変換が失敗しています。