業種別 ・ 約7分

農業の記帳で難しい3つのこと

収穫物や資材の棚卸、果樹や繁殖用家畜を「生物」として固定資産に計上すること、補助金の収益計上時期と圧縮記帳の判断。売上8%・仕入10%という税率構造も特徴です。

まず結論

難所は「収穫物の棚卸」と「補助金の処理」です

農業の記帳が他業種と違うのは、収穫した農産物・育成中の作物・家畜が棚卸資産や生物として資産計上の対象になる点です。加えて補助金・交付金の種類が多く、収益計上の時期と圧縮記帳の可否で税額が変わります。消費税は農産物が軽減税率8%、資材や機械は10%と分かれます。

1. 棚卸と生物の資産計上

対象扱い
収穫済みの農産物棚卸資産。期末在庫を計上
育成中の作物(未収穫)仕掛品的な扱い。それまでにかかった費用を集計
肥料・農薬・種苗の在庫棚卸資産
果樹・茶樹などの永年作物生物(固定資産)。成育後に減価償却
繁殖用の家畜生物(固定資産)
肥育中の家畜棚卸資産
果樹や繁殖用家畜は「生物」として固定資産に計上し、減価償却します。 苗木の購入費や成育にかかった費用を取得価額に含め、成熟して収穫できるようになった時点から償却を始めます。植えた年に全額費用にするのは誤りです。

2. 補助金・交付金の処理

農業は補助金の種類が多く、処理を誤ると税額が大きく変わります。

種類処理
経営所得安定対策などの交付金収益として計上。交付決定または受領の時期による
施設・機械の取得に対する補助金圧縮記帳の適用を検討。適用すれば課税を繰り延べられる
収入保険・共済の受取収益。損失の補填に対応するタイミング
災害関連の補助要件により特別な取扱いがある

圧縮記帳は「使えるのに使わなかった」が起きやすい制度です。補助金で機械を買った期に、その分の課税を繰り延べられます。適用には要件があり、申告時に手続きが必要なので、決算前に確認してください(補助金・助成金を受け取った)。

3. 消費税の税率

取引税率
農産物の販売(食用)8%(軽減税率)
花き・観葉植物の販売10%(食品ではない)
種苗・肥料・農薬の購入10%
農機具の購入10%
農地の賃借料非課税(土地の貸付)
農業用施設の賃借料10%

売上が8%、仕入が10%という構造になるため、本則課税では還付になることもあります。簡易課税との比較を検討する価値があります(消費税の課税事業者になるタイミングと準備)。

4. 自家消費と現物支給

  • 自家消費 — 収穫物を自分や家族で食べた分は売上として計上します(商品を自分や家族で使った
  • 従業員への現物支給 — 給与または福利厚生費
  • 贈答 — 交際費または広告宣伝費

金額は通常の販売価額を基準に計算します。個人農家で最も見落とされやすい項目です。

その他の農業特有の処理

項目処理
トラクター・コンバイン固定資産。中古なら耐用年数の見積り
ビニールハウス構築物。骨組みとビニールで耐用年数が違う場合がある
農地の取得土地。減価償却しない
用水路・農道の負担金繰延資産または費用。金額と効果の及ぶ期間による
農協への出資金投資その他の資産。費用ではない
燃料(重油・軽油)燃料費。期末在庫は棚卸資産
作業委託費外注費
家事関連費事業と家事の按分が必要(水道光熱費、車両費など)

個人農家の場合

青色申告なら、複式簿記による記帳で最大65万円の特別控除が受けられます(電子申告等の要件あり)。農業所得は変動が大きいため、平均課税の適用を検討できる場合があります。

また、家事関連費の按分が必要です。自宅と農地が一体の場合、水道光熱費・車両費・通信費を合理的な基準で分けます。基準を決めて継続してください。

外注する場合の確認

  • 農業の対応経験があるか(生物の資産計上、圧縮記帳を理解しているか
  • 収穫物・資材の棚卸をどう集計するか
  • 補助金の処理と圧縮記帳の判断を誰が行うか
  • 家事按分の基準をどう設定するか

補助金の処理は税務判断そのものです。選び方は記帳代行業者の選び方、費用は仕訳件数から試算できます。


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よくある質問

この記事に関するよくある質問

果樹や家畜は経費にできますか?

果樹・茶樹などの永年作物と繁殖用の家畜は「生物」として固定資産に計上し、成熟して収穫できるようになった時点から減価償却します。苗木の購入費や成育にかかった費用を取得価額に含めるため、植えた年に全額費用にするのは誤りです。肥育中の家畜は棚卸資産です。

補助金で機械を買った場合の処理は?

圧縮記帳の適用を検討してください。適用すれば補助金相当額の課税を繰り延べられます。要件があり申告時に手続きが必要なので、決算前に確認してください。「使えるのに使わなかった」が起きやすい制度です。

農産物の消費税は8%ですか?

食用の農産物は軽減税率8%です。一方、花きや観葉植物は食品ではないため10%、種苗・肥料・農薬・農機具の購入も10%です。売上8%・仕入10%という構造になるため、本則課税では還付になることもあり、簡易課税との比較を検討する価値があります。

経理を採用する前に、いくらで回るか確かめてください。

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