仕組みの解説 ・ 約7分

消費税の課税事業者になるタイミングと準備

売上1,000万円超の期の2期後から。ただし特定期間の判定では翌期からになります。簡易課税を選ぶかの判断、届出の期限、免税事業者のままでいる選択、よくある失敗まで整理しました。

まず結論

売上が1,000万円を超えた期の「2期後」から課税事業者です

消費税の判定は2期前(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えたかで決まります。つまり超えた期の2期後から納税義務が生じるため、準備期間が2年あります。ただし前期の前半6か月(特定期間)で1,000万円を超えた場合は翌期からになり、猶予が1年に縮みます。インボイス登録をしている場合は売上に関係なく課税事業者です。

判定のしかた

判定基準いつから課税事業者か
基準期間2期前の課税売上高が1,000万円超その2期後から
特定期間前期の前半6か月の課税売上高が1,000万円超
(給与等支払額での判定も選べる)
翌期から
インボイス登録登録番号を取得している売上に関係なく課税事業者
資本金設立時の資本金が1,000万円以上設立1期目から
課税事業者選択自ら届出をした届出の翌期から
「課税売上高」は売上のすべてではありません。 消費税が課される取引の売上高です。土地の譲渡・貸付、住宅の家賃、社会保険診療報酬などは含みません。不動産業や医療機関では、総売上と課税売上高が大きく違うことがあります。

特定期間の判定は選べます

前期の前半6か月について、課税売上高で判定するか、給与等支払額で判定するかを選べます。どちらか一方でも1,000万円以下なら、課税事業者になりません。

売上が伸びていても人件費が小さい会社は、給与等支払額での判定を使えば納税義務を1年遅らせられることがあります。逆に人件費が大きい会社は使えません。

課税事業者になる前にやること

  1. 簡易課税を選ぶかどうかを決める — 判断は次の見出しで。
  2. 届出書を出す — 簡易課税を使うなら、適用したい課税期間が始まる前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出します。期限を過ぎると、その期は本則課税になります。
  3. 会計ソフトの設定を変える — 税区分を入力する運用に切り替えます。免税事業者のときは税区分を意識せず入力していることが多く、ここで混乱が起きます。
  4. 請求書の様式を確認する — インボイス登録をしている場合、登録番号・適用税率・税率ごとの消費税額の記載が必要です。
  5. 資金を確保する — 消費税は預かった税を納めるものです。使ってしまうと納付時に足りなくなります。

本則課税と簡易課税の選び方

項目本則課税簡易課税
計算方法預かった消費税 − 支払った消費税預かった消費税 × (1 − みなし仕入率)
使える条件制限なし基準期間の課税売上高5,000万円以下+事前の届出
記帳の負担仕入側もすべて税区分の判定が必要売上の税区分だけで計算できる
インボイスの確認必要(控除の要件)不要(仕入の実額を使わないため)
有利になる場合設備投資が多い、輸出が多い、赤字仕入が少ない業種(サービス業など)
還付受けられる受けられない
簡易課税は「事務負担が軽い」ことが最大の利点です。 インボイスの確認が不要になるため、記帳の手間が大きく変わります。ただし、大きな設備投資を予定している期は本則課税のほうが有利になることが多く、一度選ぶと原則2年間は変更できません。投資計画と併せて判断してください。

免税事業者のままでいる選択

売上が1,000万円以下なら、インボイス登録をしなければ免税事業者のままです。ただし取引先が課税事業者の場合、相手は仕入税額控除ができなくなるため、取引条件の見直しを求められることがあります。

判断の材料は、取引先が事業者か消費者かです。一般消費者向けの事業(飲食店・美容室・小売など)では、相手が仕入税額控除を必要としないため、影響が小さくなります。

よくある失敗

失敗結果
課税事業者になったことに気づかず申告しなかった無申告加算税・延滞税。帳簿が無いと仕入税額控除も認められない恐れ
簡易課税の届出を期限までに出さなかったその期は本則課税。仕入の税区分をすべて判定する必要が生じる
預かった消費税を運転資金に使った納付時に資金が足りない
インボイス登録したことを忘れていた売上1,000万円以下でも申告義務がある

申告を忘れていた場合の対応は消費税の申告を忘れていたときの対応にまとめています。

記帳の負担が変わります

免税事業者から課税事業者になると、1件ごとに税区分を判定する作業が加わります。本則課税ならインボイスの確認も必要です(インボイス制度で記帳がどう変わったか)。

これまで社内で回っていた記帳が、この時点で回らなくなる会社は少なくありません。課税事業者になる期の前に、体制を決めておくと慌てずに済みます。仕訳件数から外注費用を試算できます。


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よくある質問

この記事に関するよくある質問

消費税の課税事業者になるのはいつからですか?

2期前(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えた期からです。つまり超えた期の2期後で、準備期間が2年あります。ただし前期の前半6か月(特定期間)の課税売上高が1,000万円を超えた場合は翌期からになり、猶予が1年に縮みます。インボイス登録をしている場合は売上に関係なく課税事業者です。

簡易課税と本則課税はどちらを選ぶべきですか?

仕入が少ない業種(サービス業など)は簡易課税が有利になりやすく、インボイスの確認が不要になるため事務負担も大きく減ります。一方、大きな設備投資を予定している期や輸出が多い場合は本則課税のほうが有利です。簡易課税は一度選ぶと原則2年間変更できないため、投資計画と併せて判断してください。

簡易課税の届出はいつまでに出しますか?

適用したい課税期間が始まる日の前日までです。期限を過ぎるとその期は本則課税になり、仕入側もすべて税区分を判定する必要が生じます。事後の届出はできません。

経理を採用する前に、いくらで回るか確かめてください。

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