実務の手順 ・ 約6分
経理担当者が辞めた直後の7日間にやること
引き継ぎ資料がないまま経理が辞めると、月次が止まります。採用を急ぐ前に、7日間で何を確認し、どこから復旧するか。実務の順番を整理しました。
まず結論
採用より先に、止まっている場所を特定する
経理の退職でいちばん困るのは人手不足ではなく、どこまで処理が終わっているか誰も分からない状態です。後任を採用しても、引き継ぐ相手がいなければ同じ場所で止まります。最初の7日間でやるべきは、①アクセス権の確保 ②どこまで終わっているかの特定 ③期限のある支払・申告の洗い出しの3つ。入力作業そのものは外に出せるため、採用の判断は後回しで構いません。
1〜2日目:アクセス権を押さえる
最優先はこれです。担当者しか知らないIDとパスワードがあると、以降のすべてが止まります。退職の申し出があった段階で確認してください。
- 会計ソフトのログイン情報——管理者権限のアカウントがあるか。担当者のアカウントしかない場合は権限の移管が必要です。
- ネットバンキング——閲覧権限と振込権限。担当者の電子証明書やトークンは回収します。
- クラウドストレージ・共有フォルダ——証憑のPDFがどこに保存されているか。
- 税務署・年金事務所などの電子申請——e-Tax / eLTAX / 電子申請のID。
- 取引先ポータル——請求書の受領や発行に使っているサービス。
退職前に間に合えば:「どこに何があるか」を1枚のメモにしてもらうだけで、その後の数か月が変わります。完璧な引き継ぎ書は求めず、保管場所と手順の入口だけを書いてもらってください。
3〜4日目:どこまで終わっているかを特定する
会計ソフトを開いて、最後に処理された日付を確認します。ここが分からないまま進めると、二重計上や漏れが出ます。
| 確認する場所 | 見るポイント |
|---|---|
| 仕訳日記帳 | 最終の仕訳日付。月の途中で止まっていることが多い |
| 預金出納帳 | 通帳の残高と会計ソフトの残高が一致する最後の日 |
| 未処理の証憑 | 机・引き出し・共有フォルダに残っている領収書と請求書の山 |
| 売掛金・買掛金 | 消し込みがどこまで終わっているか |
| 給与 | 直近の給与計算が完了しているか。社会保険の届出漏れがないか |
残高の一致する日まで戻るのが原則です。通帳残高と会計ソフトの残高が合っている最後の日付が、確実な出発点になります。
5日目:期限のあるものを洗い出す
記帳は遅れても取り返せますが、期限があるものは取り返せません。ここだけは先に押さえます。
- 源泉所得税の納付——原則、翌月10日(納期の特例を受けている場合は年2回)。
- 社会保険・労働保険——保険料の納付、資格取得・喪失の届出。
- 消費税・法人税の中間申告——該当する場合は期限を確認。
- 決算・確定申告——決算月から2か月以内。決算が近い場合は最優先。
- 支払サイトのある買掛金——支払遅延は取引に直結します。
期限に間に合わないと分かった場合:放置せず、税務署や年金事務所へ事前に相談してください。無申告加算税や延滞税は、遅れの理由と対応の早さで扱いが変わることがあります。
6〜7日目:復旧の方針を決める
ここまでで状況が見えたら、3つの選択肢から選びます。
| 選択肢 | 復旧までの目安 | 向いている場合 |
|---|---|---|
| 後任を採用する | 採用2〜3か月+教育1〜2か月 | 経理専任が必要な業務量がある/社内にノウハウを残したい |
| いまの社員が兼務する | 即日〜(ただし本来業務を圧迫) | 取引件数が少ない/一時的な措置として |
| 入力を外に出す | 証憑を送れば着手可能 | 採用が難しい/再発を避けたい/件数が多い |
3つ目を選ぶ場合、社内に残るのは「証憑を集めて送る」ことだけになります。処理の手順が社外の仕組みとして残るため、次に人が変わっても同じことが起きません。詳しくは経理担当者が辞めたときの対処で整理しています。
やってしまいがちな3つの失敗
- 慌てて採用する——教育に時間を取られ、かえって遅れます。採用は状況を把握してからで間に合います。
- どこまで終わったか確認せずに進める——二重計上と漏れが同時に発生し、決算で発見されて手戻りになります。
- 決算期直前まで放置する——期中の記帳が空白のまま決算を迎えると、作業量が集中して費用も膨らみます。
まとめ
経理の退職で本当に困るのは、人が減ったことではなく手順が失われたことです。最初の7日間でアクセス権と進捗を押さえ、期限のあるものだけ先に処理すれば、残りは落ち着いて判断できます。そして入力作業を外に出す形にしておけば、この状況自体が二度と起きません。
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