経理担当者が辞めた直後の7日間にやること
引き継ぎ資料がないまま経理が辞めると、月次が止まります。採用を急ぐ前に、7日間で何を確認し、どこから復旧するか。アクセス権の確保から期限のある手続きまで、実務の順番を整理しました。
採用より先に、止まっている場所を特定する
経理の退職でいちばん困るのは人手不足ではなく、どこまで処理が終わっているか誰も分からない状態です。後任を採用しても、引き継ぐ相手がいなければ同じ場所で止まります。最初の7日間でやるべきは、①アクセス権の確保 ②どこまで終わっているかの特定 ③期限のある支払・申告の洗い出しの3つ。入力作業そのものは外に出せるため、採用の判断は後回しで構いません。
1〜2日目:アクセス権を押さえる
最優先はこれです。担当者しか知らないIDとパスワードがあると、以降のすべてが止まります。退職の申し出があった段階で確認してください。
- 会計ソフトのログイン情報——管理者権限のアカウントがあるか。担当者のアカウントしかない場合は権限の移管が必要です。
- ネットバンキング——閲覧権限と振込権限。担当者の電子証明書やトークンは回収します。
- クラウドストレージ・共有フォルダ——証憑のPDFがどこに保存されているか。
- 税務署・年金事務所などの電子申請——e-Tax / eLTAX / 電子申請のID。
- 取引先ポータル——請求書の受領や発行に使っているサービス。
3〜4日目:どこまで終わっているかを特定する
会計ソフトを開いて、最後に処理された日付を確認します。ここが分からないまま進めると、二重計上や漏れが出ます。
| 確認する場所 | 見るポイント |
|---|---|
| 仕訳日記帳 | 最終の仕訳日付。月の途中で止まっていることが多い |
| 預金出納帳 | 通帳の残高と会計ソフトの残高が一致する最後の日 |
| 未処理の証憑 | 机・引き出し・共有フォルダに残っている領収書と請求書の山 |
| 売掛金・買掛金 | 消し込みがどこまで終わっているか |
| 給与 | 直近の給与計算が完了しているか。社会保険の届出漏れがないか |
残高の一致する日まで戻るのが原則です。通帳残高と会計ソフトの残高が合っている最後の日付が、確実な出発点になります。
5日目:期限のあるものを洗い出す
記帳は遅れても取り返せますが、期限があるものは取り返せません。ここだけは先に押さえます。
- 源泉所得税の納付——原則、翌月10日(納期の特例を受けている場合は年2回)。
- 社会保険・労働保険——保険料の納付、資格取得・喪失の届出。
- 消費税・法人税の中間申告——該当する場合は期限を確認。
- 決算・確定申告——決算月から2か月以内。決算が近い場合は最優先。
- 支払サイトのある買掛金——支払遅延は取引に直結します。
6〜7日目:復旧の方針を決める
ここまでで状況が見えたら、3つの選択肢から選びます。
| 選択肢 | 復旧までの目安 | 向いている場合 |
|---|---|---|
| 後任を採用する | 採用2〜3か月+教育1〜2か月 | 経理専任が必要な業務量がある/社内にノウハウを残したい |
| いまの社員が兼務する | 即日〜(ただし本来業務を圧迫) | 取引件数が少ない/一時的な措置として |
| 入力を外に出す | 証憑を送れば着手可能 | 採用が難しい/再発を避けたい/件数が多い |
3つ目を選ぶ場合、社内に残るのは「証憑を集めて送る」ことだけになります。処理の手順が社外の仕組みとして残るため、次に人が変わっても同じことが起きません。詳しくは経理担当者が辞めたときの対処で整理しています。
やってしまいがちな3つの失敗
- 慌てて採用する——教育に時間を取られ、かえって遅れます。採用は状況を把握してからで間に合います。
- どこまで終わったか確認せずに進める——二重計上と漏れが同時に発生し、決算で発見されて手戻りになります。
- 決算期直前まで放置する——期中の記帳が空白のまま決算を迎えると、作業量が集中して費用も膨らみます。
まとめ
経理の退職で本当に困るのは、人が減ったことではなく手順が失われたことです。最初の7日間でアクセス権と進捗を押さえ、期限のあるものだけ先に処理すれば、残りは落ち着いて判断できます。そして入力作業を外に出す形にしておけば、この状況自体が二度と起きません。
引き継ぎ資料が残っていない場合は引き継ぎ資料が無いまま辞められたときの復旧手順、会計ソフトに入れない場合はログイン情報が分からなくなったときを先にご覧ください。7日間を乗り切ったあとの体制は求人を出す前に確認する3つのことと経理が1人しかいない会社の備え方で判断できます。費用の目安は仕訳件数から試算できます。
根拠を一次情報で確認する
この記事で触れた制度の根拠は、以下の一次資料で確認できます。制度は改正されることがあるため、実際の適用は最新の情報でご確認ください。
この記事に関するよくある質問
経理担当者が辞めたら、まず何から手をつければいいですか?
会計ソフトとネットバンキングのログイン情報の確保が最優先です。これが分からないと記帳も支払いも止まります。次に証憑(領収書・請求書)の保管場所と、最後に記帳が完了している月を確認します。採用活動を始めるのはその後で構いません。
引き継ぎ資料が何も残っていない場合はどうすればいいですか?
会計ソフトの仕訳履歴から逆算できます。直近3か月分の仕訳を見れば、どの取引がどの科目で処理されていたか、支払いのサイクルはどうなっているかが分かります。通帳とカード明細を突き合わせれば、定期的な支払いも把握できます。
すぐに後任を採用すべきですか?
採用の前に「その業務が本当に社内でなければできないか」を切り分けてください。記帳の入力自体は外に出せます。経理1名の実質コストは月約29万円(給与22万+賞与3.7万+社会保険料の会社負担3.3万)で、外注なら仕訳件数によっては月数万円で回ります。