判断の材料 ・ 約6分

税理士に頼まず自分で申告できるか

自分の申告を自分で作ることは税理士法の制限の対象外です。判断は合法性ではなく時間と誤りのコスト。自分でやりやすいケースと危ないケース、中間的な選択肢まで整理しました。

まず結論

自分で申告することは法律上まったく問題ありません。判断は「時間の値段」です

税理士に依頼する義務はありません。本人が自分の申告書を作って提出することは、税理士法の制限の対象外です。判断すべきは合法性ではなく、かかる時間と、間違えたときのコストです。個人事業主の確定申告は自分でできる範囲に収まることが多く、法人の申告は難易度が一段上がります

法律上の位置づけ

税理士法52条が禁じているのは、税理士でない者が「他人の求めに応じて」税理士業務を行うことです。自分自身の申告は「他人の求め」ではないため、制限されません。

誰が誰の申告を可否
本人自分の申告問題なし
会社の従業員その会社の申告問題なし(会社の内部行為)
無資格の外部業者顧客の申告税理士法52条違反
家族・知人(報酬なし)他人の申告無償でも違反
「無償ならいい」は誤りです。 税理士法52条は報酬の有無を問いません。知人の申告書を善意で作ってあげる行為も、業として反復すれば違反にあたります。

自分でやりやすいケース

  • 個人事業主で、取引がシンプル — 売上先が少なく、経費の種類も限られる。会計ソフトの案内に沿って進められます。
  • 白色申告、または青色10万円控除 — 複式簿記が不要なため、負担が小さくなります。
  • 給与所得者の還付申告 — 医療費控除、ふるさと納税、住宅ローン控除の初年度など。国税庁の作成コーナーで完結します。
  • 設立初年度で、まだ動きが少ない法人 — 取引がほとんど無ければ、法人でも作成可能な場合があります。

自分でやると危ないケース

状況なぜ危ないか
法人の申告別表の作成が必要。欠損金の繰越、減価償却、交際費、役員給与など、誤りやすい論点が多い
消費税の申告課税区分の判定を1件ずつ行う必要がある。簡易課税の届出期限も絡む
不動産の売却取得費・特例の適用で税額が大きく変わる。1回の誤りが数百万円になり得る
相続・贈与評価が専門的。やり直しがきかない
複数の所得がある損益通算・繰越控除の判断
従業員がいる年末調整、法定調書、源泉徴収の管理が加わる

費用の比較で考える

「税理士に払う費用」だけを見ると高く感じますが、比較すべきは次の3つです。

  1. 自分の時間 — 初めて法人申告をすると、調べる時間を含めて数十時間かかることがあります。その時間を本業に使った場合の売上と比べてください。
  2. 誤りのコスト — 過少申告加算税・延滞税、青色申告の取消し(青色申告の承認が取り消されるケース)。特例の適用漏れによる払い過ぎも実損です。
  3. 使えるはずだった制度 — 少額減価償却資産の特例、各種の税額控除。知らなければ使えません。ここが自力申告で最も損をする部分です。

中間的な選択肢もあります

「全部自分」か「全部税理士」の二択ではありません。

内容向いている会社
記帳は自分、決算だけ依頼期中は自分で入力し、決算・申告を税理士に取引が少なく、時間はある
記帳は外注、申告も依頼入力から申告まで一本化本業に集中したい
入力は自分、チェックを依頼月次で誤りを見てもらう(自社入力+チェック社内に担当者がいる
スポット相談だけ判断に迷う取引のときだけ相談基本は自分でやれる

頼み方の比較は依頼のしかたにまとめています。

自分でやると決めた場合の注意

  • 期限を必ず守る — 2期連続の期限後申告は青色申告の取消し事由です。
  • 帳簿と証憑を保存する — 原則7年(欠損金が生じた事業年度は10年)。電子で受け取ったものは電子のまま(電子帳簿保存法の要件を満たす証憑の保存方法)。
  • 届出書の期限を逃さない — 青色申告の承認申請、消費税の簡易課税選択など、事前の届出が必要なものは事後にできません
  • 判断に迷ったら止まって確認する — 迷ったまま処理を続けると、同じ誤りが1年分積み上がります。

迷ったときの目安

次のどれかに当てはまるなら、専門家を入れたほうが結果的に安く済むことが多いです。

費用の目安は仕訳件数から試算できます。記帳だけ外に出す場合と、決算まで含める場合の両方が出ます。


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よくある質問

この記事に関するよくある質問

税理士に頼まずに自分で申告してもいいですか?

問題ありません。税理士法52条が禁じているのは税理士でない者が「他人の求めに応じて」税理士業務を行うことで、自分自身の申告は対象外です。会社の従業員がその会社の申告書を作ることも内部行為なので問題ありません。

知人の確定申告を無償で手伝うのは大丈夫ですか?

大丈夫ではありません。税理士法52条は報酬の有無を問わないため、無償でも業として反復すれば違反にあたります。申告書の作成や税務相談は、たとえ善意でも他人のために行えません。

自分で申告すると危ないのはどんなケースですか?

法人の申告(別表の作成、欠損金の繰越、役員給与など誤りやすい論点が多い)、消費税の申告、不動産の売却、相続・贈与です。特に相続はやり直しがきかず、不動産の売却は1回の誤りが数百万円になり得ます。

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