実務の手順 ・ 約7分

電子帳簿保存法の要件を満たす証憑の保存方法

義務なのは「電子取引データの保存」だけで、電子帳簿等保存とスキャナ保存は任意です。専用システムを買わずに要件を満たす4ステップ(フォルダ・ファイル名・年度分け・事務処理規程)を具体的にまとめました。

まず結論

「電子で受け取ったものは、電子のまま保存する」——義務なのはここだけです

電子帳簿保存法は3つの制度に分かれますが、全事業者に義務があるのは「電子取引データの保存」だけです。メールで届いたPDFの請求書を印刷して紙で保管する運用は、要件を満たしません。残る2つ(電子帳簿等保存・スキャナ保存)は任意で、やらなくても違反にはなりません。まずここを切り分けてください。

3つの制度を切り分ける

制度対象義務/任意
電子取引データの保存メール・Web・EDIなどで電子でやり取りした請求書・領収書・契約書義務
電子帳簿等保存会計ソフトで作った帳簿・決算書を電子のまま保存すること任意
スキャナ保存紙で受け取った書類をスキャンして電子保存し、紙を捨てること任意
「電子帳簿保存法に対応しなければならない」と聞いて全部やろうとする会社が多いのですが、必須なのは1つ目だけです。 紙で受け取った請求書は、紙のまま7年保存すれば何の問題もありません。

何が「電子取引」にあたるか

  • メールに添付されたPDFの請求書・領収書
  • 取引先のWebサイトからダウンロードした請求書
  • Amazon・楽天などECサイトの購入履歴・領収書
  • クレジットカードのWeb明細
  • クラウドサービスの利用料の領収書
  • EDI取引のデータ
  • 電子契約サービスで締結した契約書

「紙で郵送されてきたもの」以外は、ほぼ電子取引です。気づかないうちに大量に発生しています。

保存の要件

電子取引データの保存には、大きく2つの要件があります。

1. 真実性の確保(次のいずれか)

  • タイムスタンプが付されたデータを受け取る
  • 受け取ったデータにタイムスタンプを付す
  • 訂正・削除の履歴が残るシステム、または訂正・削除ができないシステムで保存する
  • 訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用する

中小企業で現実的なのは最後の「事務処理規程」です。国税庁がサンプルを公開しており、それを自社用に直して備え付ければ足ります。費用がかかりません。

2. 可視性の確保

  • ディスプレイ・プリンタなどを備え付け、すぐに出力できること
  • システムの概要書を備え付けること
  • 検索できること——取引年月日・取引金額・取引先の3項目で検索できる状態
検索要件には猶予があります。 一定規模以下の事業者で、税務調査の際にデータのダウンロードの求めに応じられる場合は、検索機能の要件が不要になる取扱いがあります。自社が該当するかを確認してください。

いちばん安く済ませる運用

専用システムを買わなくても対応できます。

  1. 保存用のフォルダを1つ決める — 社内サーバーでもクラウドストレージでも構いません。
  2. ファイル名のルールを決める — 「20260728_株式会社◯◯_110000.pdf」のように日付_取引先_金額で統一します。これでファイル名検索が使えます。
  3. 年度ごとにフォルダを分ける — 保存期間の管理がしやすくなります。
  4. 事務処理規程を備え付ける — 国税庁のサンプルを自社名に直すだけ。

この4つで要件を満たせます。会計ソフトの証憑保存機能を使えば、さらに簡単です。多くのクラウド会計は、仕訳に証憑を添付すると自動で検索要件を満たす形で保存されます。

やってはいけない運用

運用問題
PDFを印刷して紙で保管し、データは消す電子取引データの保存義務に反します
メールボックスに入れっぱなし検索性がなく、担当者が辞めると失われます
ファイル名が「請求書.pdf」「scan001.pdf」検索要件を満たしません
個人のPCのデスクトップに保存会社の保存になっていません

違反した場合

保存要件を満たさないことが直ちに重い処分につながるわけではありませんが、青色申告の承認取消しの検討対象になり得ます。また、証憑が確認できなければその経費が否認されるリスクがあります。実害はそちらのほうが大きくなります。

インボイス制度と連動します

電子で受け取った適格請求書は、電子帳簿保存法の要件で保存する必要があります。紙に印刷しただけでは、仕入税額控除の要件を満たさない可能性があります。2つの制度は別ですが、実務では同時に効いてきます。

詳しくはインボイス制度で記帳がどう変わったか、制度の概要は電子帳簿保存法にまとめています。証憑の集め方の実務は無料の証憑整理シートもご利用ください。


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よくある質問

この記事に関するよくある質問

電子帳簿保存法で必ずやらなければいけないことは何ですか?

電子取引データの保存だけです。メールやWebで受け取った請求書・領収書を、電子のまま保存する義務があります。印刷して紙で保管しデータを消す運用は要件を満たしません。電子帳簿等保存とスキャナ保存は任意で、やらなくても違反にはなりません。

専用のシステムを買わないと対応できませんか?

買わなくても対応できます。保存用フォルダを決め、ファイル名を「日付_取引先_金額」で統一し、年度ごとにフォルダを分け、国税庁のサンプルをもとに事務処理規程を備え付ける——この4つで要件を満たせます。費用はかかりません。

紙で受け取った請求書もスキャンが必要ですか?

必要ありません。紙で受け取ったものは紙のまま7年(欠損金が生じた事業年度は10年)保存すれば問題ありません。スキャナ保存は任意の制度で、紙を捨てたい場合にだけ検討するものです。

経理を採用する前に、いくらで回るか確かめてください。

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