実務の手順 ・ 約7分

消費税の申告を忘れていたときの対応

消費税は赤字でも納付が生じ、帳簿が無いと仕入税額控除が認められず預かった消費税を全額納めることになり得ます。法人税より重い理由と、自主申告で軽減される仕組み、納付できない場合の猶予制度まで整理しました。

まず結論

気づいた時点で、自分から申告するのが最も軽く済みます

消費税の申告を忘れていた場合、税務署から指摘される前に自主的に申告すれば、無申告加算税は軽減されます。放置するほど延滞税が積み上がり、指摘されてからでは加算税も重くなります。さらに消費税には法人税には無い固有のリスクがあり、無申告のままだと仕入税額控除が認められず、預かった消費税を全額納める事態になり得ます。

消費税の無申告が法人税より重い理由

消費税は「預かったお金を納める」税金です。そのため、次の点で扱いが厳しくなります。

論点内容
赤字でも納税がある法人税は赤字なら発生しませんが、消費税は赤字でも納付が生じます。「利益が出ていないから申告は要らない」は通用しません
仕入税額控除の要件帳簿と請求書等の保存が要件です。帳簿が無い状態では控除が認められない可能性があります。そうなると売上に係る消費税を丸ごと納めることになります
簡易課税の届出簡易課税を使うには事前の届出が必要です。無申告の期間について後から選ぶことはできません
金額が大きくなりやすい売上規模がそのまま税額に響くため、数年分をまとめると資金繰りを直撃します

そもそも自社は課税事業者か

申告義務があるかどうかを最初に確認します。判定は次のとおりです。

  • 基準期間(原則2期前)の課税売上高が1,000万円超 → 課税事業者
  • 特定期間(前期の前半6か月)の課税売上高が1,000万円超(給与等支払額での判定も可)→ 課税事業者
  • インボイス発行事業者の登録をしている → 売上規模にかかわらず課税事業者
  • 資本金1,000万円以上で設立した法人 → 設立当初から課税事業者
インボイス登録をした事業者は、売上が1,000万円以下でも申告義務があります。 登録したこと自体を忘れているケースが実務では見られます。登録番号を取得している場合は必ず申告が必要です。

いま何をすべきか

  1. 対象年度を確定する — どの事業年度(課税期間)が未申告か。複数年ある場合は全部を洗い出します。
  2. 記帳を完成させる — 申告書は帳簿から作ります。記帳が止まっているなら、そこからです(記帳が数か月遅れているときの取り戻し方)。
  3. 証憑を集める — 仕入税額控除には帳簿と請求書等の保存が要件です。捨てていないか確認します。
  4. 概算で納付する — 申告書の完成を待たず、見込み額を先に納付すれば延滞税の増加が止まります。
  5. 期限後申告を提出する — 税務署から連絡が来る前に出すことが重要です。

加算税と延滞税

種類いつかかるか軽減されるか
無申告加算税期限までに申告しなかった場合調査の通知前に自主申告すれば軽減。通知後・調査後は段階的に重くなる
延滞税納付が遅れた日数分納付した時点で止まる。申告より先に納付してよい
重加算税隠蔽・仮装があった場合最も重い。売上を意図的に除外した場合など

税率は改正されることがあるため、実際の金額は税務署または税理士に確認してください。確実に言えるのは「早く出すほど軽い」ということです。

納付できない場合

金額が大きく、一括で納付できないことがあります。この場合も申告だけは先に出してください。申告と納付は別の手続きです。

  • 換価の猶予 — 一時に納付すると事業の継続が困難になる場合、申請により分割が認められることがあります。原則1年以内。
  • 納税の猶予 — 災害や事業の著しい損失など、一定の事情がある場合の制度です。
  • いずれも申請が必要で、放置していると財産の差押えに進みます。早めに税務署の徴収部門に相談してください。

次から忘れないために

消費税の申告忘れは、次の要因で起きます。それぞれ対策があります。

原因対策
課税事業者になったことに気づいていない売上が1,000万円を超えた期の2期後から課税事業者。超えた時点でカレンダーに入れる
インボイス登録したことを忘れている登録番号を取得したら、その時点から申告義務がある
記帳が止まっていて申告書が作れない月次で記帳を回す体制にする
担当者の退職で引き継がれなかった申告期限の一覧を社内に残す(経理担当者が辞めた直後の7日間にやること
中間申告の存在を知らなかった前期の消費税額に応じて中間申告が必要。税務署から納付書が届く

根本的には、記帳が毎月回っていれば申告忘れはほぼ起きません。期限の管理も含めて外に出す形にすると、社内の担当者が代わっても止まりません。仕訳件数から費用を試算できます。


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よくある質問

この記事に関するよくある質問

消費税の申告を忘れていた場合、まず何をすべきですか?

税務署から指摘される前に自主的に申告することです。調査の通知前に自主申告すれば無申告加算税は軽減されます。申告書の完成を待たずに概算で納付すれば、その分の延滞税は止まります。申告と納付は別の手続きなので、納付を先に行って構いません。

赤字でも消費税の申告は必要ですか?

必要です。法人税は赤字なら発生しませんが、消費税は預かった税を納める仕組みのため赤字でも納付が生じます。「利益が出ていないから申告は要らない」という判断は誤りです。

納税額が大きくて一括で払えない場合は?

申告だけは先に出してください。そのうえで、一時に納付すると事業の継続が困難になる場合は換価の猶予を申請できます。原則1年以内の分割が認められることがあります。いずれも申請が必要で、放置すると財産の差押えに進みます。

経理を採用する前に、いくらで回るか確かめてください。

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