自動車整備業の記帳で難しい3つのこと
車検時に預かる自賠責・重量税・印紙代を売上に含めると、売上高が過大になるだけでなく消費税の納税額も変わります。部品在庫の棚卸、中古車販売がある場合の棚卸資産としての管理も論点です。
難所は「車検の預り金」と「部品在庫」です
自動車整備業で最も間違えやすいのは、車検時に預かる自賠責保険料・重量税・印紙代を売上に含めてしまうことです。これらは顧客に代わって支払う預り金であって、自社の売上ではありません。混ぜると売上高が過大になり、消費税の課税売上も膨らみます。もう一つは部品在庫の棚卸——品目数が多く、省略されがちな項目です。
1. 車検の預り金
| 項目 | 性質 | 消費税 |
|---|---|---|
| 整備料金・車検基本料 | 自社の売上 | 課税 |
| 部品代 | 自社の売上 | 課税 |
| 自賠責保険料 | 預り金 | 非課税 |
| 重量税 | 預り金 | 不課税 |
| 印紙代(検査手数料) | 預り金 | 非課税 |
| 代行手数料 | 自社の売上 | 課税 |
2. 部品在庫の管理
整備工場は部品の品目数が多く、棚卸が負担になります。しかし期末在庫を計上しないと利益が過少になります。
- 常備部品 — オイル、フィルター、ワイパー、バッテリーなど。数量×単価で集計
- 取り寄せ部品 — 特定の車両用に仕入れたもの。作業前なら在庫、作業済みなら原価
- ケミカル類 — オイル、洗剤など。使いかけの容量をどう数えるかを決めておく
- タイヤ — 単価が高いため、在庫金額への影響が大きい
すべてを1個ずつ数えるのが難しい場合、金額の大きいものから集計し、少額品は概算という方法もあります。重要なのは方法を決めて毎年同じやり方で行うことです。
3. 中古車の売買がある場合
整備に加えて中古車の販売もしている場合、処理が増えます。
| 項目 | 処理 |
|---|---|
| 販売用の中古車 | 棚卸資産(固定資産ではない) |
| 下取車 | 仕入。下取価格を値引きとして処理しない |
| 整備してから販売 | 整備にかかった費用を取得価額に加算 |
| 自社使用の車両 | 固定資産。中古車は耐用年数を見積る(中古車の耐用年数) |
| 古物商の帳簿 | 古物営業法上の記録義務。会計とは別に必要 |
下取りを値引きとして処理するのは誤りです。売上と仕入をそれぞれ総額で計上します。
その他の整備業特有の処理
| 項目 | 処理 |
|---|---|
| リフト・テスター | 固定資産。中小企業投資促進税制の対象になることがある |
| 工具 | 10万円未満は消耗品費。セット購入は単位に注意 |
| 廃油・廃タイヤの処理 | (ゴミ処理・産業廃棄物の処理費) |
| 整備士の資格取得費用 | 研修費(資格取得・セミナー受講の費用) |
| 認証・指定工場の申請費用 | 支払手数料または租税公課 |
| 代車 | 固定資産。自社使用なので棚卸資産ではない |
| ロードサービスの加盟金 | 繰延資産または支払手数料。金額と期間による |
| 作業着のクリーニング | (制服・作業着のクリーニング代) |
売掛金の管理
法人顧客や保険会社への請求は掛売りになります。
- 保険修理は保険会社への請求と顧客の自己負担分で入金元が分かれます
- ディーラーからの下請け作業は月締めが一般的
- 取引先ごとに補助科目を分けると、回収漏れが見つかります
外注する場合の確認
- 車検の法定費用(預り金)の区分をどう管理するか
- 部品在庫の集計を誰が行うか
- 中古車販売がある場合、棚卸資産としての管理ができるか
- 保険会社への請求と自己負担分の売掛管理
1番目は消費税の納税額に直結するため、最初に運用を決めてください。選び方は記帳代行業者の選び方、費用は仕訳件数から試算できます。自動車整備の記帳・経理もご覧ください。
この記事に関するよくある質問
車検の法定費用は売上に含めますか?
含めません。自賠責保険料・重量税・印紙代は顧客に代わって支払う預り金です。売上に含めると売上高が過大になり、これらは非課税・不課税なので課税売上も膨らみ消費税の納税額が変わります。請求書で「整備料金」と「法定費用」を分けて表示してください。
部品在庫の棚卸はどうすればいいですか?
品目数が多いため、金額の大きいものから集計し少額品は概算という方法もあります。重要なのは方法を決めて毎年同じやり方で行うことです。取り寄せ部品は作業前なら在庫、作業済みなら原価になります。
販売用の中古車は固定資産ですか?
棚卸資産です。販売する目的で保有しているため固定資産ではありません。自社で使う車両や代車は固定資産になります。下取車は仕入として総額で計上し、値引きとして処理しないでください。