仕組みの解説 ・ 約6分

無資格者ができる経理業務・できない業務の一覧

境界は「作業か、判断か」です。入力・整理・集計・照合はすべて無資格で行えます。給与計算も無資格で可能ですが、年末調整の税額確定は税理士、社会保険の手続きは社労士の領域。3つの資格領域を一覧で整理しました。

まず結論

境界は「作業か、判断か」です。手を動かすことは資格が要りません

経理業務のうち、資格が必要なのは税務上の判断を伴うものだけです。入力・整理・集計・照合といった作業は、すべて無資格で行えます。一方で「どう処理すべきか」を決める行為と、税務署に出す書類を作る行為は税理士の独占業務です。さらに社会保険や労働保険の手続きは社会保険労務士の領域で、税理士でもできません。

資格の領域は3つに分かれます

領域資格根拠
税務の判断・申告税理士税理士法2条・52条
社会保険・労働保険の手続き社会保険労務士社会保険労務士法2条・27条
登記司法書士司法書士法3条・73条
それ以外の経理作業不要

無資格でできる業務

区分具体的な業務
記帳領収書・請求書・通帳からの仕訳入力、証憑の整理・保管、会計ソフトへの取り込み
月次試算表の作成、残高照合、部門別・案件別の集計、月次資料の作成
債権債務請求書の発行、入金消込、支払データの作成、買掛金の管理
給与勤怠集計、給与計算、給与明細の作成・配布
経費経費精算の受付・チェック、立替金の精算
年末調整の周辺申告書の配布・回収、記入漏れの確認、証明書の突合
資料作成資金繰り表、予算実績対比、経営者向けの報告資料

給与計算が無資格でできる点は誤解されがちです。計算そのものは税理士の独占業務ではありません。ただし、年末調整の税額確定と法定調書の作成は税務書類の作成にあたるため税理士の領域、社会保険の資格取得・喪失の手続きは社労士の領域です。同じ「給与まわり」でも、担当できる人が変わります。

税理士でなければできない業務

  • 税務相談 — 「この支出は経費になるか」「どの科目で処理すべきか」「消費税は課税か非課税か」に答えること。無償でも違反です。
  • 税務書類の作成 — 法人税・所得税・消費税の申告書、各種届出書、年末調整の税額確定、源泉徴収票、法定調書。
  • 税務代理 — 申告書の提出、税務調査の立会い、更正の請求。
「相談に答える」と「一般的な情報を伝える」は違います。 「国税庁のサイトにこう書かれています」と情報を示すことと、「あなたの場合はこう処理すべきです」と判断を示すことは別です。後者が税務相談にあたります。

社労士でなければできない業務

  • 健康保険・厚生年金の資格取得届、喪失届、算定基礎届、月額変更届
  • 雇用保険の資格取得届、離職証明書
  • 労働保険の年度更新(概算・確定保険料申告書)
  • 就業規則の作成・届出
  • 助成金の申請書類の作成・提出

これらは税理士でも代行できません(一部、税理士が付随業務として行える範囲はありますが、限定的です)。「給与も社保も全部おまかせ」という案内を見たら、社労士が関与しているか確認してください。

迷ったときの判断基準

問いYesなら
その行為の結果、納税額が変わるか?税理士の領域の可能性が高い
作った書類を税務署に出すか?税務書類の作成=税理士
作った書類を年金事務所・労働局に出すか?社労士
決まったルールに従って手を動かすだけか?資格は不要

実務では「作業だけ外注」が成り立ちます

資格が要る部分と要らない部分は、実務上きれいに分けられます。よくある形は次のとおりです。

  • 入力は外部、判断と申告は税理士 — 最も一般的。判断が必要な取引だけ税理士に上げます。
  • 入力は社内、チェックと申告は税理士 — 社内に人がいる場合(自社入力+チェック)。
  • すべて税理士事務所に — 記帳から申告まで一本化(顧問契約に含める)。

一本化すると、判断が必要な場面で作業が止まりません。「これは判断だから聞かないと進められない」という中断が発生しないのが、実務上の最大の利点です。

詳しい線引きは記帳代行は税理士法違反になるのかに、任せられる範囲は任せられる範囲にまとめています。


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よくある質問

この記事に関するよくある質問

給与計算は資格がなくてもできますか?

計算そのものは税理士の独占業務ではないため、無資格でもできます。ただし年末調整の税額確定と法定調書・源泉徴収票の作成は税務書類の作成にあたり税理士の領域、社会保険の資格取得届や算定基礎届は社会保険労務士の領域です。同じ給与まわりでも担当できる人が変わります。

資格が必要かどうか迷ったときの判断基準は?

4つの問いで判断できます。その行為の結果として納税額が変わるか(税理士)。作った書類を税務署に出すか(税理士)。年金事務所や労働局に出すか(社労士)。決まったルールに従って手を動かすだけか(資格不要)。

試算表や月次資料の作成は無資格でできますか?

できます。税務署に提出する書類ではないため、税理士業務に含まれません。残高照合、部門別の集計、資金繰り表、経営者向けの報告資料も同様です。

経理を採用する前に、いくらで回るか確かめてください。

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